さまざまな分野で新しい材料を作り出す! クラスターに集まる期待
クラスターって何?
金属原子が数個から数十個、100個以下で集まったものを「金属クラスター」といい、「バルク(塊)」を小さくしてできる原子が数百個以上集まった「ナノ粒子」と「原子」間がクラスターです。一方、「金属酸化物クラスター」は、金属原子の周りに酸素が6原子ほどくっついて1つの金属酸化物ユニットとなったものが数個~数十個ほど集まったものになります。
研究が盛んになってきた金属クラスター
近年、1原子の違いで構造、光学特性、反応性が著しく変化する金属クラスターの研究が盛んになってきています。その背景には、真空中という極めて理想的な空間でしか生成することができなかった金属クラスターを、フラスコの中で合成できるようになったことがあります。有機分子を保護配位子として用いることで、金や銀を中心にサイズや組成を原子レベルで緻密に制御した金属クラスターの合成が可能になったことで、バルクの金属からは想像できない新しい構造、物性が発見されています。まだまだ基礎研究の段階ですが、金属クラスターの特異な電気物性、光学特性、反応性が明らかになれば、新しいデバイスや触媒の開発が期待できます。
金属酸化物クラスターの新展開
金属酸化物クラスターはポリ酸として知られており、1800年代から研究が進められています。濃硫酸に匹敵する“超強酸性”を示す材料としても知られており、酸触媒をはじめ、光触媒、磁性体、構造体の開発が進められています。近年、欠損構造をもつ金属酸化物クラスターが塩基触媒作用を示すことが報告されました。これは欠損構造により局所的に塩基点が発現したことに起因します。最近では金属酸化物クラスターの電荷そのものを制御することで欠損構造を作ることなく、塩基触媒作用を示す材料が報告されました。このクラスターは二酸化炭素変換反応に活性を示すことがわかっており、塩基触媒作用を利用した新しい環境調和型の触媒反応系の開発が期待できます。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 理学部 化学科 教授 山添 誠司 先生
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