変革の時代を迎えたアパレル業界に必要なものとは?
日本における洋服文化の定着
日本に洋服文化が定着したのは、「モボ」「モガ」などと呼ばれる若者たちが登場した1920年代から30年代にかけての時期です。当時は、百貨店が流行の発信地でした。第二次世界大戦後には、大手アパレル企業が百貨店を中心にした委託販売方式によって急成長を遂げます。1970年代から80年代には、著名な日本人デザイナーが次々に台頭して、一大ファッションブームが到来し、アパレル業界は空前の好業績に沸き立ちました。
ファストファッションと通販サイトの台頭
その後、日本のアパレル業界は長期的な不況に陥りました。最盛期に比べると、現在の市場規模は半分程度にまで縮小しました。理由は2つあります。
1つは、価格競争力です。従来の委託販売方式では、売れ残った商品が返品されてしまうため、商品価格が高くなってしまい、生産や在庫の調整も難しいというデメリットがあります。そして製造から小売までを一手に担うファストファッション企業の躍進により、競合に敗れたアパレル企業や百貨店の倒産・閉店が相次ぐようになりました。
2つめに、デジタル化です。インターネットの通販サイトが、顧客情報を把握した上で購買履歴からおすすめの商品を提案することや、体のサイズを採寸・登録することでネット経由でもぴったりのサイズの服が購入可能になるという新しい試みを行っています。それらも従来型のアパレル企業にとって大きな脅威となっています。
これからのアパレル企業に必要な経営戦略
これからのアパレル企業に必要なのは、そのブランド独自の世界観やストーリーをきちんと構築し、商品を身にまとうことの意味を顧客に提案することです。PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルの実践によってコスト面の改善を図ることや、Webとの連携、SNSによる情報発信、顧客情報の効率的な管理などによって顧客を「つかむ」ことも重要になります。従来の得意分野を深化させるだけでなく、新しい挑戦にも恐れず取り組む「両利きの経営」が今、求められているのです。
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先生情報 / 大学情報
成蹊大学 経営学部 総合経営学科 教授 伊藤 克容 先生
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