AI活用×実験で作る、フレキシブルな電子デバイス
ペラペラの電子デバイス
近年注目されている「有機半導体」とは半導体の性質を持った有機物のことで、身近なものではテレビやスマホのディスプレイに使われる有機ELがあります。パソコンやスマホなど従来の電子デバイスは硬さやある程度の重量がありますが、有機半導体を用いれば、薄くて軽く、柔らかい電子デバイスを作れます。有機半導体の材料を溶剤でインク化して、それを使ったプリンタで印刷すれば、食品ラップのようなフィルムにも電子回路が作れるのです。シリコンなどを使った電子デバイスは製造過程で千度前後の高温にする必要がありますが、有機半導体は常温で作れるため環境への負荷が低いのも特徴です。
AIを活用したスマートな実験
有機半導体の研究で活躍するのがAIやシミュレーションです。例えば、AIを使った分子設計ツールは、人が自由に書いた構造式の有機分子がどのような性質を持つのかを瞬時に予測してくれるので、有機半導体に適した分子の開発に有用です。この分子設計ツールは無償で公開されています。さらに、人が構造式を書かなくてもAIが適当な分子を1万個程度作ってその性質を予測し、好ましいものをピックアップしてくれるツールも開発されています。こうしたAIの予測をもとに実験が行われ、その実験自体もプログラミングで自動化されています。AIを使った実験には、人の先入観が入らず予想外の発見に繋がるというメリットもあります。
応用はヘルスケアからロボットまで
AIと実験を組み合わせた方法で、フィルム状のシート型センサが開発されています。センサは人の接近の感知や、温度分布の測定、肌に貼りつけて汗の成分から血糖値を測るなど、いろいろなものが可能です。シート型センサは腕時計型のデバイスよりも装着の負担が軽減されます。遠隔治療や入院患者の健康管理、高齢者や乳幼児の体温調整、働く人のストレス評価といったヘルスケア用のウェアラブルデバイスとして期待されます。また、温度や圧力を感知するロボットの皮膚としても応用が可能です。
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先生情報 / 大学情報
山形大学 工学部 高分子・有機材料工学科 教授 松井 弘之 先生
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