「光る有機化合物」がテレビを変えた!
電気を流すと光る有機化合物
「有機ELテレビ」という厚さ数ミリの超薄型テレビが登場しています。有機ELテレビの「有機」とは有機化合物のことです。名前の通り、テレビ画面の内部には、「電気を流すと光る有機化合物」が入っているのです。もともと、プラスチックをはじめとする有機化合物は電気を通さないというのが常識でした。ところが1977年、後にノーベル賞を受賞する白川英樹博士が電気を流す高分子を発見し、世界に大きな衝撃を与えました。そして、研究者たちがさらに実験を進めるうちに、薄膜にして電気を流すと光る有機化合物が見つかってきたのです。薄くすることにより電気が流れて光るので、薄型テレビの発明につながったわけです。
照明やフレキシブルディスプレイにも
その後研究が進み、現在ではテレビ以外に照明への応用が進んでいます。一般的に使われているLED照明(無機化合物)の点光源と異なり、有機化合物を使えば面全体を光源とする照明が実現できるため、点光源に見られるまぶしさや影が出にくくなり、明かりがより自然になります。したがって、光る有機化合物を光源とする照明は、目に優しいデスクスタンドやアート作品の照明として適しているのです。さらに、有機化合物の薄膜が自由に曲げられるという性質を利用して、折り畳み可能な「フレキシブルディスプレイ」への活用なども研究されています。
課題の解決に向け日夜取り組む有機化学者
一方、光る有機化合物の活用には課題もあります。有機化合物は一般に電気を流すと壊れやすくなってしまうので、電気を流しても壊れにくい分子を作る必要があります。また、色調の調整や化合物を作る工程の効率化なども課題です。こうした課題については、今までの学問の蓄積である程度の対策は立案できますが、実験してみないとわからないこともたくさんあります。有機化学者たちは、課題の解決に向けて、納得のいく結果が出るまで日夜研究に取り組んでいるのです。
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先生情報 / 大学情報
京都工芸繊維大学 工芸科学部 物質・材料科学域 応用化学課程 教授 清水 正毅 先生
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