金属原子は動きながら、CO₂を有機物に変える?

銅を使ったCO₂還元の追究
世界的な環境保護の課題の一つに、「CO₂を減らす」ことが挙げられています。
様々な再生可能エネルギーを元に、電気エネルギーが生み出されていますが、CO₂を電気エネルギーを使って別の化合物に変換する、CO₂還元の研究が実施されています。光合成でCO₂を還元して糖が作られているように、CO₂還元は無限とも言える有機物の材料を産み出します。ここでは電極上のナノメートル(1mの10億分の1を示す単位)サイズの銅を用いて、CO₂の有機物への還元を紹介します。
有機膜で包んで銅の特性を生かす
この研究では、ナノサイズの銅の表面を有機化合物の膜で包み、CO₂還元を行っています。銅はありふれた金属ですが、ナノサイズに銅原子を配列すると色々な性質を引き出すことができます。こうした銅原子は、有機分子の様に決まった構造を維持しておらず、流動的です。そこで、この軟らかな銅でキューブやワイヤーなど様々なナノサイズの構造体を作り、有機化合物による膜で包み込むことで、CO₂から特定の有機化合物を、メタンや水素などの余計な生成物を抑えて生成すること、またその反応性を長持ちさせられることが見出されました。また、包まれる銅の構造、包む有機物の種類などによってCO₂還元の結果が大きく異なり、”包み方”に含まれる要因についても解析が進められています。
実用化に向けた研究
反応の実用化、特にCO₂還元は、安価、大容量で行えないとかえって環境コストが上がってしまいます。そのために大きな面積の電極を作れるか、耐久性は十分かといったことが問題になります。気体であるCO₂を電極という2次元表面で還元するには、原子レベルで反応性が良くても、全体の設計が悪ければ効率は下がってしまい、良い触媒ができても見逃すかもしれず、今後も多面的な知識をつけながら実験を重ねていく必要があります。それでもこの研究の成果は、銅を含む金属によるCO₂還元の実現に結びつく、新しい技術の一端となるかもしれないと期待されています。
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