重力以外の力が強くなるミクロの世界で「粉体」を扱う技術
もっとスリムでコンパクトなスマホを作るために
スマートフォンは、どんどん薄く小さくなっています。スリム化を実現するため詰め込まれる電子部品も小型化されていて、中にはわずか300ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)ぐらいのパーツもあります。このように微細な部品を作る方法は、ミクロン単位の大きさの粉体を型に入れる成形加工です。ただし、粉体を型に正確に入れるためには、精密に制御しなければなりません。ところが物質は粉体レベルの微粒子になると、コントロールすることが極めて難しくなるのです。
ミクロン単位になると物体に働く力が変わる
地球上では、万有引力の法則により、すべてのものに重力が働いています。同時にものとものが近づくと相互作用が働き、静電気や分子間力(ファンデルワールス力と言います)が働きます。通常の物体なら重力の方が圧倒的に大きいために、ほかの力は無視できます。ところがミクロン単位の粉体になると重力の影響が小さくなり、相対的に静電気や分子間力が強くなるのです。10ミクロンぐらいのサイズまで小さくなると、こうした力の影響が強くなるため、粒子同士がくっついて動かなくなるなど取り扱いが難しくなってしまうのです。
極小の粒子を一つのものとして扱う技術
粉体をコントロールするためには、微粒の粉体の一粒ずつを、一つの「もの」として扱わなければなりません。例えば粉体を入れた容器を高速回転させると、遠心力が働きます。遠心力が重力の100倍ぐらいになると、大きな粒子と同じような状態を作り出すことができ、粉体を扱いやすくなります。あるいは温度と圧力を臨界点まで高めた超臨界状態にすると、拡散性がよくなるので粉体の粒子をきめ細かく制御できます。このようにミクロンサイズの粉体の極小の粒子を一つずつ正確に扱う技術が、これからのものづくりのカギを握っており、こうした技術は医薬品開発などへの応用でも期待されています。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 工学部 化学工学科 教授 綿野 哲 先生
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