あなたの健康を守るための知識を導きだす「疫学」とは
病気の要因を探り、予防や治療につなげる
「肥満は健康に悪い」「運動は認知症やがんのリスクを下げる」「サバやアジなど青魚の脂肪酸は花粉症を予防する可能性がある」など、生活習慣と病気との関係が知られるようになりました。このような知識の多くは、「疫学(えきがく)」の研究によってわかってきたことです。疫学とは、集団を対象に病気の頻度や分布、そして分布を決める要因を明らかにし、予防や治療につなげようという学問です。
コゲを食べるとがんになりやすい?
疫学では、何十年もかけて追跡調査を行うことがあります。その結果、常識とされていたことが覆った例がありました。
魚や肉のコゲた部分を食べるとがんになるリスクは上がるのでしょうか? コゲに含まれる「ヘテロサイクリックアミン」という化学物質に発がん性があることは動物実験で確かめられていて、一時は「コゲを食べると健康によくない」と言われていました。しかし、疫学で長年追跡調査したところ、人間が普段の食事で口にする程度のコゲであれば、がんのリスクを気にしなくてもよいことがわかりました。化学物質でがんが発生する仕組みはあっても、人間の生活レベルに照らし合わせて考えると、リスクではなかったのです。
生活習慣病の予防に役立つコーホート研究
長期間にわたる疫学の追跡調査のことを、「コーホート研究」と言います。近年では、解析技術の進歩で、生活習慣に加えて血清や血しょう、DNAからのデータを集めて、病気の遺伝的な要因などを探る「分子疫学」が盛んになっています。
2014年現在、2025年までの計画で、「J-MICC STUDY(日本多施設共同コーホート研究)」という取り組みが行われています。これは、10万人以上を対象に、どのような生活習慣や遺伝的体質の人がどんな病気にかかったかを追跡調査するというもので、日本初の大規模な分子疫学のコーホート研究です。この調査結果は、がんや心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などさまざまな病気の予防に役立つことでしょう。
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