イスラム社会の学校はどんなところ? 宗教と教育とは
多様な宗教が息づく国
インドネシアでは、「パンチャシラ」という建国五原則があり、6つの宗教を公認しています。それは、国民の9割が信仰するイスラム教、キリスト教のプロテスタントとカトリック、ヒンズー教、仏教、儒教です。このような多様な宗教を信仰する人々が暮らしている社会では、どのような教育が行われているのでしょうか。
インドネシアの学校教育
インドネシアでは日本の文部科学省にあたる国家教育省が学校教育を統轄しており、宗教省の管轄によって宗教ごとのカリキュラムが決められています。義務教育を9年と定め、今その制度が整備されつつあるところです。
学校は一般学校の「スコラ」とイスラム近代学校の「マドラサ」に分かれていますが、どちらの学校でも宗教は必修で、イスラム教徒の生徒はイスラム教について学びます。また近年、伝統的な「プサントレン」という寄宿塾も人気があり、イスラム大学に接続して農村部の指導者や宗教省の役人、判事、教師などを輩出しています。
これらイスラム系の学校では、アラビア語で書かれた聖典『コーラン』を暗唱することから学びが始まり、あちこちで子どもたちが声高らかに『コーラン』を暗唱する姿が見受けられます。神の教えをしっかりと覚えて、現代にその教えを生かすことが宗教を学ぶ目的です。このほかにイスラム法学やイスラム倫理、信仰に基づいて利子を取らないイスラム金融学なども学びます。
宗教を学ぶのは何のため
イスラム社会は過激だと考える人もいるかもしれませんが、それは一部の人の話です。多くのムスリム(イスラム教徒)は、私たちと同じように平和な社会を望んでいます。異なる価値観を持つ人々が共存する社会をつくるために、教育は大切です。学びを通して理解と対話を進める力を身につけてこそ、多様な人々が共に暮らす社会を築くことができます。日本は政教分離の原則に基づいて公立学校で宗教を学ぶことはありませんが、世界を見渡してみると、宗教を教えることがその国の人材を育てる重要な要素になっているケースもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 教育学部 国際社会文化コース 教授 西野 節男 先生
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