室内環境と子どもの健康 化学物質との上手な付き合い方

化学物質の人体への影響を調査
化学物質は、私たちの生活を便利で快適なものにしてくれる一方で、健康に悪影響を及ぼすこともあります。短期間の動物実験では問題が生じないからといって、人が長期間利用した場合も安全とは限りません。また、動物と人との種差もあります。そのため、人を対象とした疫学調査として2001年から調査が行われているのが「環境と子どもの健康に関する研究(北海道スタディ)」です。北海道の妊婦さんと産まれたお子さんを対象に、生活環境中で無意識に触れている化学物質と健康との関連について、継続調査が行われています。
家具等に使われる化学物質がアレルギーの原因に?
その一環として、室内の化学物質と子どもの健康との関連が研究されています。例えば、子どもの尿と家のハウスダストに含まれるリン系難燃剤の濃度を測定して、子どものアレルギー症状との関連を調べた結果、家具や電化製品、カーテン、床ワックスなどに使われるリン系難燃剤にさらされると、子どものアレルギー症状が増える可能性があることがわかりました。
また、その継続調査で子どもの尿中の化学物質濃度を測定した結果、規制された化学物質の濃度は2012~2017年にかけて減った一方で、代替物質の濃度が増えていることが確認されています。その代替物質が健康に与える影響についても、継続して調査が進められています。
排除ではなく共存を
北海道スタディでは、このほかにも多数の成果が得られており、化学物質使用に関する規制やガイドラインの必要性の検討に役立てられています。調査開始から20年を越えて、3世代調査が実施できることも期待されています。
化学物質は生活に欠かせないものであり、一切の使用を禁止することは現実的ではありません。北海道スタディを通じて人体に影響のない化学物質も見つかっており、使い方や量を守れば長期間安全に使用できるものもあります。メリットとリスクのバランスを取って、健康を保持できる化学物質との付き合い方を見つけていくことが大切なのです。
参考資料
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北海道大学環境健康科学研究教育センター 特任准教授アイツバマイ ゆふ 先生
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