遺伝子を調べて健康を守る「オーダーメイド予防」
予防とは何か
病気の予防には、3段階あります。第1次は病気にならないように生活習慣を見直したり予防接種を受けたりする段階、第2次は健診などを受けて早期に病気を発見し重症化を防ぐ段階、第3次は適切な治療を行い、治療後はリハビリを行ったり、再発を防止したりする段階です。予防とは、病気を未然に防ぐだけではなく、命を守るためのすべての行為を指すのです。
予防を考えるときに欠かせないのは、「疫学(えきがく)」の知識です。「分子疫学」と呼ばれる分野では、ゲノム(遺伝情報)を調べて、病気の要因を探ろうという研究が進んでいます。
病気になりやすい遺伝子を探る
ゲノム解析によって、遺伝子には人によって型の違い(遺伝子多型)があることがわかりました。例えば、お酒に強い・弱いは遺伝的な要因で決まることが知られています。アルコールからできるアセトアルデヒドという物質は、頭痛や二日酔いの要因になるほか、発がん性があります。体内にはアセトアルデヒドを解毒する酵素が備わっていて、酵素を作る遺伝子はGlu/Glu型、Glu/Lys型、Lys/Lys型の3つのタイプに分かれています。その遺伝子の型によってアルコールの処理能力が異なるのです。Lys/Lys型の人は、酵素の働きが弱いため解毒できず、ほとんどお酒を飲めません。無理に飲むのは大変危険です。また、Glu/Lys型の人も酵素の働きがそれほど強くないので身体への負担が大きくなりがちで、Glu/Glu型の人より、アルコールが要因で、食道がんなどの病気になりやすい遺伝的な特徴を持っています。
遺伝子の型に合った予防が大切
今、がんや心臓病、脳卒中、糖尿病、認知症など、病気にかかりやすい遺伝子の型が明らかになってきています。病気になるかどうかはそれだけで決まるわけではありませんが、その遺伝子の型を持っている人は、こまめに健診を受ける、生活習慣を改めるなどで予防につながります。一人ひとりに合った「オーダーメイド予防」で、健康を守る時代が来ようとしているのです。
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