時代を映し出す映画の魅力

時代を映し出す映画の魅力

昔の映画は未熟なもの?

映画の魅力とは、美しい映像やスターの存在でしょうか。それともストーリー性でしょうか。映画の誕生には諸説ありますが、1895年、リュミエール兄弟が作ったシネマトグラフがその始まりの一つだと言われます。かつて初期映画は、未熟なものとして歴史的に重要視されませんでした。しかし学問的な分析が進むにつれ、初期映画にも独自の美学や観客をひきつけるための工夫があることがわかってきたのです。

目新しさから物語を楽しむ時代へ

初期映画の特徴は、感覚的な刺激に重点が置かれていたことです。ジェットコースターやお化け屋敷のようなスリルを楽しむために、外国の風景や動物、刺激的なヌードなどが見世物的な感覚で上映されました。観客は映像が動くこと自体に驚き、映画というテクノロジーを楽しんだのです。
当時アメリカでは、演芸場で手品や踊りなどパフォーマンスを見せるボードビルが、映画の題材として主流でした。それが1910年前後、映画制作の中心がニューヨークなどの東海岸から西海岸に移り、ハリウッドが形成されたころに転換期を迎えます。人々は、あるテーマに沿った物語を楽しむようになったのです。また、ハリウッドができたことは、映画産業の確立を意味しました。集団で分業する今の制作スタイルが整ってきたのです。

ますます多様化する現代の映画

戦後、映画は新たな局面を迎えます。テレビの普及にともない、テレビでは表現できないこと、例えば過激で派手なアクション映画など、映画館の大きなスクリーンを生かした娯楽大作が増えていきました。現代も、特殊効果や3Dなどデジタル技術を駆使した超大作がある一方で、実験的な作品が作られるなど、多様な映画が生まれています。
映画史を注意深く見ていくと、現代の映画に対する概念が実は当たり前ではないことに気づきます。時代ごとに映画に対する考え方は異なるのです。映画の魅力とは、一つではなく歴史とともにさまざまに変化するものなのでしょう。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 大学院文学研究科  教授 藤木 秀朗 先生

名古屋大学 大学院文学研究科 教授 藤木 秀朗 先生

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映像学、映画史、映画理論、映像文化

メッセージ

私は映像学、映画史や映画理論の研究をしています。この分野は、海外ではフィルムスタディーズと呼ばれ歴史がありますが、日本ではまだ比較的新しいものです。高校で学ぶ科目ではないので、映画を研究することはイメージしづらいかもしれません。しかし映画に興味のある人はもちろん、たとえ詳しくなくても、面白いテーマを見つけることができるはずです。なぜなら、社会のさまざまな側面を総合的にとらえることができるからです。映画・映像の魅力を通じて、視野を広げてみませんか?

名古屋大学に関心を持ったあなたは

名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。