経済において、競争はなぜ必要か? どんな競争が必要なのか?
無制限の競争は富と権力の集中を生む
そもそも経済学は、平和で豊かな社会を作るためにはどうしたらよいかを研究する学問分野です。
経済学は歴史から学ぶことも少なくありません。19世紀末から20世紀初頭にかけてのアメリカでは、企業同士で無制限の競争が行われ、合併を重ねて少数の大企業が生まれました。その結果、大企業同士が話し合って価格をつりあげるカルテルが結ばれ、さらに富が大企業だけに集中することになりました。富を持つ企業のトップは、政治的発言力も強め富と権力が少数の企業経営者に集まったのです。その結果、貧富の差が拡大し経済も停滞しました。
政府の過度の規制も経済の停滞を引き起こす
このように、行き過ぎた競争は社会経済を停滞させますが、かといって政府が過度に経済活動に介入してさまざまな規制をして企業間の競争を排除しようとすると、やはり経済は停滞します。
競争するからこそ各企業は利益を生み出すための工夫をし、品質のよい製品を作って売り上げを伸ばします。それが経済的発展に寄与することになります。競争がなくなれば、努力する必要がなくなり結果的に生産性の低下を招きます。このように、競争はある意味で「善」であり、ある意味で「悪」であるという二面性を持っているのです。
経済動向を先読みしながら競争政策を進める
そこで、どのような競争形態が望ましいのかという「競争政策」の研究が始められ、各国に研究の場が広がっています。今後、政府は経済動向を注意深く先読みしながら、経済が発展していくよう競争政策を実施していくことが求められます。その場合には、一部の企業に加担しない公正なルール作りが大切です。競争の行き過ぎで企業が嘘をついてまでもうけようとすることを防ぐ方策もとらなければなりません。今後も、政府はもとより経済学者も一緒になって、よりよい豊かな社会を作るためにどのような競争政策をどう実施していくべきかを冷静に議論することが求められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。