ゲノムの中の一文字違いを探せ! 個別化医療への期待

ゲノムの中の一文字違いを探せ! 個別化医療への期待

遺伝情報を表す文字の違いが個人の違いになる

ゲノムとは、細胞中の染色体が持っている遺伝情報のことで、生命の設計図とも呼ばれます。その設計図はATGCの4文字で表され、ヒトのゲノムはトータルで約30億文字にもなります。ATGCとは、染色体を構成するDNA分子が含んでいる4種類の物質の頭文字で、この並びの違いが遺伝情報の違いです。
体内では遺伝情報に基づき遺伝子からタンパク質が合成されていますが、この文字が一つでも異なる「変異」が起こると、合成されるタンパク質が違ってきます。例えば、アルコールを分解する酵素もタンパク質の一種ですが、この情報が一文字違うと、お酒が飲めるかどうかなど、体質が変わってきます。こうした情報が一人ひとりわかれば、その人に合った個別の医療を受けたり、将来かかりやすい病気がわかり予防できたりします。

タンパク質の構造から変異の特徴を調べる

ヒトゲノムには全部で約3億文字の変異が見つかっています。この変異がどのような特徴をもたらしているかを統計的に調べることもできますが、統計結果だけでは、その特徴を起こす仕組みがわからず、それに合わせた薬を作ることもできません。そこで、変異を持った遺伝子が作り出すタンパク質の構造をコンピュータで予測し、構造からわかるそのタンパク質の機能を調べることで、その変異がどのように人体の違いを生んでいるかを解明する研究が進んでいます。

AIが加速する個別化医療や創薬の未来

この研究には、「バイオインフォマティクス」という、生命情報をコンピュータで解析する手法が使われています。例えばタンパク質の構造を調べる場合、従来の、変異のある遺伝子をもとに実際にタンパク質を実験で合成する手法だと、膨大な時間がかかります。しかし最近ではAI(人工知能)の発達によって、短期間で高い精度でタンパク質の構造・機能を予測することができるようになりました。それにより、個別化医療や個別化予防、創薬などの研究も進むと期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東北大学 工学部 電気情報物理工学科(大学院情報科学研究科) 准教授 西 羽美 先生

東北大学 工学部 電気情報物理工学科(大学院情報科学研究科) 准教授 西 羽美 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生命情報科学、生命科学、データサイエンス

先生が目指すSDGs

メッセージ

生命科学に関わるデータをコンピュータで解析する「バイオインフォマティクス」や、もっと一般的に様々なデータを解析する分野である「データサイエンス」が生まれたのは、比較的最近のことです。サイエンスやテクノロジーの分野は日進月歩なので、高校1年の時に得た情報は、2年後の3年の時には古くなっているかもしれません。
ですから、進路を考える時には、今ある学問のカテゴリーに無理やり自分を当てはめなくて大丈夫です。世界の変化に応じて、その都度、自分がしっくりくるところに進んでいきましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

東北大学に関心を持ったあなたは

建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造しています。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献して行きます。社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている東北大学の教職員、学生、同窓生が一丸となって、「Challenge」、「Creation」、「Innovation」を合言葉として、価値ある研究・教育を創造して、世界の人々の期待に応えていきたいと考えます。