生徒の「想像力」「独創性」を育む授業を設計する
新たな教育方法が求められている現代
これまで、日本の教育は文部科学省が定めている教育指導要領のもと画一的におこなわれ、その結果、知識の詰め込みだけが偏重され、想像力や独創性が欠如する生徒が生まれると危惧されてきました。しかし、グローバル化が進み、さらに日本社会が成熟し、価値の多元化が進む中で、これまでの教育手法では21世紀は立ち行かないという気運が生まれています。そこで、今までの既成の概念にとらわれない、カードを用いてランキングするなど新たな教育方法が求められています。
教科を飛び越えて多角的に調べ・学ぶ
新たな教育方法では、これまでのように教師から受け身的に授業を受けるのではなく、教科の枠組みを飛び越えて自発的に仲間と学びあうことに重点が置かれています。
高校の教育現場ではすでにオリジナリティあふれる取り組みが始まっています。例えば「水」というテーマで学ぶなら、降雨量の少ないアフリカで植林をしている人に話を聞く、川に出かけて生態系を調べる、川の水の成分を調べる、など多角的に水について深く掘り下げます。これまでは、植林の仕事の話を聞くのは地理、川の生態系を調べるのは生物、水の成分を調べるのは化学の授業でおこなわれることでした。しかし、水について総合的に調べ、生徒同士がディスカッションして疑問点を解き明かすことで、より深く考える力がつき、新たな発想力を生むことになります。
教育「設計」「評価」の研究が必要
既成の枠組みに縛られない授業を「設計」することも難しいのですが、こうした授業が生徒たちにどんな効果をもたらすかを「評価」することはさらに難しいものです。テストの採点をするようなことはできません。「評価」の手法として、生徒たちに、何を学び、何に興味を持ったかなどを文章で書かせる、図やマップを協力して描かせる、などがおこなわれています。その結果から、生徒たちの独創力、深い思考力を推し量ることができます。
教育の「設計」と「評価」が教育現場で普遍化するまでさらに幅広い研究が必要となるのです。
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東北大学 教育学部 教育科学科 教授 有本 昌弘 先生
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