主人公がクヨクヨ悩むヤンキー漫画から考える、表現と社会意識
ヤンキー漫画と花魁靴
漫画『東京卍リベンジャーズ』の主人公は、ヤンキーでありながら弱く、過去を悔やみ、悩んでいます。また、かつてのヤンキー漫画のように「自分はヤンキーである」とストレートに表現できず、ヤンキーであることに葛藤を抱えており、それでもなんとか仲間を救おうと奮闘するところに面白さがあります。
また、現在流行している花魁(おいらん)のような厚底靴は、土台の上に建物をつくる建築手法と同様に、「存在を主張する」アイテムです。それは履く人の存在感がないことの裏返しであると同時に、その主張は強いものではなく、現状の自分をなんとか維持する程度にとどまっている点も特徴的です。
表現される「意識」
社会の中で人気を集めている漫画やアニメ、ファッションには、現代の人々が抱えている悩みや葛藤といった「意識」がさまざまに表現されています。例えば『東京卍リベンジャーズ』の主人公と厚底靴をはく若者には、自分を表現することを通して、他者とのつながりを得ようとする意識が読み取れます。さらに深く読み解けば、周囲と同じであることを求められる「同質性」と、周囲よりも少しでも優位に立たなければならない「競争社会」という、相反する価値観の中で生まれた、複雑で現代的な意識も垣間見えます。
独自の視点
このように、メディアやファッション、建築といった表現の中に表れるさまざまな意識を分析し、それらを社会全体に広げて読み解く社会学の手法を「メディア内容分析」といいます。さまざまな表現やそこから読み取れる意識は、科学的に論じ実証するための「データ」になります。一方、そうしたデータをもとに筋道を立てて結論まで導く「論証」をするためには、独自の視点を持つことが不可欠です。例えば厚底靴を見て、単に「流行のアイテム」ととらえて終わるのではなく、先行文献の研究や自分の経験を通して「自分に存在感がないから履くのでは?」という問いを抱くことが、社会学研究の第一歩になるのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪経済大学 人間科学部 人間科学科 教授 城 達也 先生
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