経済学には文系の知識も理系的なスキルも必要

経済学とはなにかしらの最適化
経済学では「制約付き最適化」という視点に立脚します。予算や所得など、制約がある中で、利益の最大化やリスクの最小化等をどうすれば良いのかを考えるものです。それをツールとして、企業や個人がどのように利益や効用を最適化しているかを分析します。その際に、主に微分などの数学を用いた手法がよく使われています。そして近年では、データの重要性が増しています。統計学の応用として計量経済学という分野があり、今後はAIによる機械学習なども、経済分析でさらに活用されるようになるでしょう。
人間は時に不合理な生き物
一方で、人間による経済活動や消費行動には、さまざまな要素が含まれます。そのため人間の行動や思想、文化といった人文・社会科学的な視点をもつことも重要です。例えば経済学では基本的に合理的な人間の活動を主な対象としています。限定合理性ということも考慮しますが、データにはできないような感情の動きや集合的な偏見などの形成などをうまく説明することはできません。また、人間はそもそも自己矛盾を抱える生き物です。ほかにもジェンダーや環境といった問題も経済と深く結びついています。こうしたことから、経済学を深く学ぶためにも、人文領域の哲学・思想や心理学の知見も大事です。
SNSにだまされないために「頑健な因果性」を
世の中の動きを把握するには、こうした多様な「制約」を考慮する必要がありますが、例えばSNSには「これで景気が良くなる」といった「わかりやすい」言説が良く出てきます。ただし、少なくとも先進国に限れば、データや科学的な知見を用いた「頑健な因果性」に基づいて経済成長率を上げる方策はまだ見つかっていません。また、昨今は減税を期待する声も目立ちますが、人手不足とインフレが進行する中での減税は良い結果を招かないということが歴史に繰り返されています。世にあふれる不確かな情報に惑わされないためにも文理バランスよく学ぶことが、経済学においても重要です。
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群馬大学情報学部 情報学科 准教授江良 亮 先生
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