300億年で1秒も狂わない! 日本発の「光格子時計」が開く世界

300億年で1秒も狂わない! 日本発の「光格子時計」が開く世界

300億年に1秒以下の誤差、「光格子時計」

日本発の「光格子時計」は、世界にある超高精度原子時計の最先端を行くもののひとつです。
現在の1秒の定義は、セシウム原子時計によるもので、その誤差は1秒の「10⁻¹⁵」です。しかし、光格子時計の誤差は「10⁻¹⁸」で、300億年に1秒以下の誤差しか生じないという正確さです。宇宙の誕生(ビッグバン)から137億年ですから、その精度の高さが実感できることでしょう。これは、複数のレーザー光で格子状の容器を作り、その中に100万個の原子を閉じ込めることによって得られた精度なのです。

ゆがんだ世界

光格子時計の精度は、私たちの日常生活とかけ離れたものと思われるかもしれません。しかし、光格子時計によって今まで見えなかった世界が見えてくるところに、この時計の面白さと重要性があります。その1つが「時空のゆがみ」です。
地上の時計は重力の影響を受けているので、地面に近いほど強い重力のせいでゆっくり進みます。1mにつき1秒の「10⁻¹⁶」分、時間が経つのが遅れます。
とすると、同じ場所にいても高さが違えば、違う「時間」を生きていることになります。つまり、私たちが生きている時空はぐにゃりとゆがんでおり、光格子時計はそのゆがんだ、相対性理論の世界を示すことができるのです。

地下の構造探査も可能?

重力の強さによっても時計の進み方が変わってくることを利用すれば、光格子時計は高さを知るセンサーにもなります。
これを応用すると、例えば地震の前兆となるわずかな地殻変動をとらえられるかもしれません。ある地点での時計の進み方が、通常より速くなったり遅くなったりするということは、地下でなんらかの変化が起こっているわけですから、それを感知し分析すれば、地震予測の可能性が出てきます。
光格子時計によって、今まで見えなかったさまざまなものが見えてくるのです。

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東京大学 工学部 物理工学科 教授 香取 秀俊 先生

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誰もやっていないことに目を向け、自分にしかできないことにチャレンジする人になってほしいと思います。「誰もやっていないこと」を見つけるのはそんなに簡単なことではありません。これまでに何がわかっていて、何がわかっていないのかを、まず知らなければいけません。そのために先人が残したものを学んでほしいです。学校のカリキュラムは、そうしたことを効率的に学べるようになっていますから、高校時代はしっかりと勉強し、自分にしかできないことを見つけてほしいと思います。

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