新種の粒子をつかまえろ! 〜素粒子から見る宇宙の始まり〜
物質を構成する最小の粒「素粒子」
この世界の物質は原子でできています。原子は電子と原子核からなり、原子核は陽子と中性子で構成されています。さらに陽子や中性子の中にはクォークという最小の粒「素粒子」があります。138億年前にビッグバンが起こったとき、宇宙はあらゆる物質が小さな領域に閉じ込められた高温で高エネルギーの世界でした。その火の玉のような宇宙ではさまざまな素粒子が飛び交っていましたが、宇宙が膨張するにつれて温度も下がり、3つのクォークからなる現在の陽子や中性子へと変化していきました。この素粒子という極小の世界から宇宙の始まりを探る研究が行われています。
加速器で新しい粒子を作る
実験では、兵庫県にあるSPring-8などの加速器施設で宇宙初期のような高エネルギー状態を再現し、今の世界には安定に存在しないクォークの組み合わせでできた粒子を作りだします。これらの粒子は一瞬で崩壊してしまうため、崩壊した後にできる粒子を放射線検出器で観測し、運動量や質量を測って、その組み合わせから崩壊前の粒子の質量を算出します。今世紀に入ってから4つ以上のクォークからなる粒子の候補が見つかり、その構造や力の働き方、陽子や中性子などの安定な粒子へと変化する過程が調べられています。また、実験物理では、検出器などの実験装置を作るところから研究が始まります。
世界初の暗黒物質候補を探す
いまだ解明されていない宇宙の謎のひとつが暗黒物質です。宇宙に銀河や銀河団などの構造が生まれたのは、初期宇宙が均一でなく密度の偏りがあったためで、その偏りのもとが暗黒物質であると考えられています。ただし、暗黒物質の正体はまだわかっていません。素粒子のひとつ「ニュートリノ」は、これまでに3種類が確認されており、暗黒物質の候補として、相互作用せず重い新種のニュートリノ「ステライルニュートリノ」の存在を示唆する実験があります。世界初となるステラリルニュートリノをとらえるため、加速器を使った実験が進められています。
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先生情報 / 大学情報
京都産業大学 理学部 物理科学科 教授 新山 雅之 先生
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素粒子物理学、原子核物理学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?