細胞のアメーバ運動の秘密を探る!
雪の結晶や風紋にひかれるのはなぜ?
雪の結晶、牛乳を一滴垂らしたときにできるミルククラウン、砂漠の風紋などに人は興味をひかれ、感動します。これらに共通するのは、「自律的に生み出される規則性」の美しさです。自然現象の中では規則性が見られますが、それを最も顕著に生み出すのは生命現象でしょう。複雑な生体の構造はたった1つの受精卵からできあがりますし、体内時計は正確に時を刻み続けます。「自律的に生み出される規則性」は、生命現象の大きな特徴で、たった1つの細胞にさえ見られます。
細胞の運動の規則性
アメーバ運動は、原生動物アメーバの移動から白血球の遊走、神経細胞のネットワーク形成までみられる細胞の普遍的な機能です。アメーバ運動では、細胞の進行方向前端が伸長し後端が退縮します。このとき、伸長と退縮がそれぞれ勝手に行われれば、運動が破綻しやがて細胞は崩壊してしまうでしょう。
外部に誘引物質があるとき細胞はその方向に向かって移動します。誘引物質がない場合でも、細胞は運動を停止するのではなく、でたらめな方向に運動します。これは、誘引物質がない場合でも細胞はアメーバ運動ができなくなるわけではなく、でたらめながらも方向を決めて運動できるということです。細胞の右半分が右に進み、左半分が左に進もうとして、細胞がちぎれて死んでしまうことはまずありません。誘引物質がなくても細胞が「前後極性」を作って運動できるのは、実はなかなか大変なことです。
規則性は自分で作る
誘引物質がない状況でも細胞が破綻せずに動くのがアメーバ運動の根本的なメカニズムだとすれば、その現象はとても単純なメカニズムで成り立っているはずです。アメーバ運動をするために、細胞は接着している地面に牽引力を発揮しています。だとすると細胞はこの牽引力の反作用の力を、程度の差こそあれ、必ず細胞膜や細胞骨格の変形として受容しているはずです。この細胞自身が基質に発揮する「力」が、運動のための前後極性を形成するための根本的なシグナルになっていると考えられるのです。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 理学部 生物学科 准教授 岩楯 好昭 先生
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