高性能ドローン開発のカギはプロペラまわりの流れ!
さまざまな工業製品に生かされている流体工学
「流体工学」とは、気体や液体の動きを研究し、ものづくりに生かす学問です。流体工学は飛行機や自動車をはじめ、身の回りにあるさまざまな工業製品にも生かされています。現在、流体工学を使って盛んに研究されているものの一つが、マルチコプター、いわゆる「ドローン」のプロペラです。現在使われているドローンはせまい場所や障害物がある場所での操作が難しく、飛行可能な時間もそれほど長くありません。そこで空気の流れを計算し、使用するモーターに最適化したプロペラを開発することで、より精密な動きができ、かつ長時間飛行できるドローンの実用化をめざした研究が進められています。
開発は「数値解析」と「実験」の繰り返し
プロペラを開発するときは、まず基本翼型を決め、回転数、プロペラ直径、モーター出力などの条件を設定し、設計理論に基づいた渦の動きをコンピューターでシミュレーションし、抵抗が小さくて効率の良いプロペラ形状を計算します。続いて実際にプロペラを作ってドローンを飛ばす実験を行います。プロペラは精密に設計されているので、わずかな狂いも生じないよう慎重な製作が求められます。また実験の際は、プロペラに「感圧塗料」という特殊な塗料を塗り、どの部分に空気圧がかかっているのか視覚的にわかるようにします。実験でうまくいかない場合は、前提条件などに間違いがないかを見直します。こうした作業を何度も繰り返しながら、プロペラを完成させていくのです。
他分野や企業との協力も重要
時間のかかる作業ですが、失敗の原因を考え、試行錯誤しながら完成をめざすのが研究の醍醐味(だいごみ)でもあります。また、仮に想定通りのプロペラができたとしても、機体の制御やモーターとの相性が悪ければドローンはうまく飛びません。これらの課題を解決するためには、他分野や企業とも協力しながら開発を進める必要があります。プロペラの開発に限らず流体工学の分野では、他分野や企業と合同で研究を進めるケースが数多くあります。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 機械数理工学科 准教授 宗像 瑞恵 先生
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