自由な時間だと思っているけれど……? 余暇について考える

自由な時間だと思っているけれど……? 余暇について考える

「好ましい余暇」と「好ましくない余暇」がある

余暇の過ごし方は「趣味」という言葉で置き換えることができます。人は趣味を聞かれたとき、聞いた人との関係性によって答えが変わります。「読書」「音楽鑑賞」など、公にしてもかまわない趣味もあれば、言う相手を選ぶ趣味もあります。このように、建て前と本音を使い分ける理由は、趣味によって人柄が判断されると私たちが思っているからです。それでは、好ましい余暇と好ましくない余暇の線引きはどこで、その理由は何でしょうか。

線引きと理由

「旅行」「スポーツ」「テレビゲーム」「パチンコ」「睡眠」など、さまざまな余暇活動を好ましいものと好ましくないものに分けてみましょう。そして、その理由も考えてみましょう。
高校生に聞いてみると、「自分がやっていて楽しいこと」「自分を成長させてくれるもの」「気分転換やリフレッシュになるもの」が好ましい余暇活動で、「お金を浪費するもの」が好ましくない余暇活動であるという意見が得られました。好ましい余暇活動に「見聞を広げてくれるもの」を加えてもよいでしょう。
さらに、同じ活動でも人によって好ましい・好ましくないの基準が変化する場合があります。これは年齢や社会的立場、経済事情、宗教的理由、ジェンダーなどによって基準が変化すると考えられます。高校生がギャンブルをするのは好ましくないですし、自分の経済状態の範囲を超える買い物も好ましくないでしょう。

余暇は深いテーマ

私たちは、余暇とは何にも縛られない自由な時間だと考えています。しかし前述のように考えてみると、実際は年齢や社会的立場、経済事情、宗教的理由、ジェンダーなどの影響を受けた自分が投影された時間だということがわかります。
余暇の研究は歴史的観点、社会学的観点、哲学的観点などさまざまな観点から考えることができます。また、国家の政策とからめて考えることもできます。研究対象として実に深いテーマなのです。

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東京大学 教養学部 教養学科 言語態・テクスト文化論コース 准教授 板津 木綿子 先生

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歴史学

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メッセージ

私の高校時代は、インターネットが登場する前で、地方に住んでいたので情報を渇望していたことを思い出します。オンラインで情報を得ることも大事ですが、いつも多方向にアンテナを張り、さまざまな機会をとらえて自ら出かけて行き、経験を増やすことはとても大事だと思います。同級生だけではなく、いろいろな世代の友人・知人をつくり、違う考え方を吸収することは重要で、自分の勉強の理解度もアップすると思います。例えば修学旅行などでも、ただ皆についていくのではなく、お店の人と少し話すだけでも考え方が広がると思います。

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。