大人と子どもは時間の感じ方が違うの?
時間を認識する感覚を実験データで分析
人間の知覚や認知については、認知科学や脳科学などの学問でも扱われていますが、実験心理学では、特にその知覚や認知によって人がどう振る舞うのか、そこから起こる現象をどう理解するのかに焦点を合わせて研究していきます。例えば、子どもの頃は夏休みをとても長く感じていたのに、大人になると1カ月強の時間はあっという間にたってしまう、という人間の時間の認識に対する「ずれ」は、ギリシア時代の昔から指摘されてきました。
この問題について、実験心理学では、人間が時間をどう処理して、どう認識するかという視点で考えていきます。身体条件や感情などの状況によって時間をどう感じるかを実験し、データを分析していく研究が数多く行われてきました。時間の認識に関しては、身体の代謝や、感情の活性度、時間への注意、空間の広さなどとの関係がわかってきています。
大人は時間を損しているわけではない
大人になると時間の経過を速く感じる理由は、科学的に証明されています。ある課題を実行させてそれにかかったと思われる時間を報告させる実験や、ある時間の間だけボタンを押させるような実験の結果、年齢が高くなるほど時間を短く感じることが多いとわかりました。
また、同じ時間の長さであっても、出来事の数が多いほど時間が長く感じられるという傾向が、大人よりも子どもで強いことがわかっています。生活の中での特別なイベントが大人より子どもの方が多いことも、子どもと大人の時間の感じ方の違いに関係していると推測されます。
ですが、体感する時間の長短は、単純に損得で勘定できるものではありません。楽しく充実した時間は、大人でも子どもでも短く感じます。人間の知覚は、いまだ完璧には解き明かされていません。実験心理学で新説を発見した際に研究者自身が驚くような、身近だけれどわかっていなかった現象がたくさんあるほどなのです。最近では、心の中で時間を計る時計が複数ある説が発表されましたし、まだまだ新しい驚きを秘めた学問だと言えます。
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千葉大学 文学部 行動科学科 教授 一川 誠 先生
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