講義No.12309 物理学

100億年前を追え! ガンマ線バーストから宇宙の謎を解明

100億年前を追え! ガンマ線バーストから宇宙の謎を解明

毎日起こっている宇宙最大級の爆発現象

1967年、アメリカの核実験監視衛星が地球からではないガンマ線を捉えました。その後、そのガンマ線は天体現象とわかり、宇宙最大級の爆発であることが判明しました。
「ガンマ線バースト」と呼ばれるこの現象は、太陽よりも重い恒星が終末期を迎えて崩壊するときや、中性子星(中性子でできた高密度の星)同士がぶつかるときに起き、その後にブラックホールになると考えられています。まず大量のX線・ガンマ線が、続いて可視光などの電磁波が放出されます。その放射はわずか100秒程度ですが、そのエネルギーは原子力発電所の発電量1037年分と非常に大きく、これは毎日のように観測されているのです。

100億年前の宇宙の姿を観測している

ガンマ線バーストは地球から100億光年離れた場所で起きています。つまり、私たちは100億年前の星の爆発を今見ているのです。宇宙は130億年前に誕生したので、宇宙初期の姿と言えます。
ガンマ線は地球の大気に吸収されるため、大気圏外にいる人工衛星で観測し、地上の望遠鏡は可視光の観測をします。また、ガンマ線バーストが起きるときに、時空のゆらぎである「重力波」も発生すると考えられており、近年この観測も盛んに行われています。このようにさまざまな波長の電磁波や重力波を同時に観測、分析することで、ガンマ線バーストの起源が研究されています。

ガンマ線検出技術の活用

そんな中、従来よりもエネルギーの低いガンマ線を検出できる装置が開発され、これを搭載した人工衛星が2023年度に打ち上げられる予定です。ガンマ線バーストに重力波が伴う場合は、低エネルギーのガンマ線が放出されている可能性が高いとわかってきたからです。そして、地上で重力波を観測しているチームと連携して、より詳しい研究が行われる予定です。
さらに、こうしたガンマ線検出技術は、レントゲンのような医療機器にも活用できる可能性があります。現在、医療分野と共同で、次世代の医療イメージング機器を開発する研究も進んでいます。

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金沢大学 理工学域 数物科学類 助教 有元 誠 先生

金沢大学 理工学域 数物科学類 助教 有元 誠 先生

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宇宙物理学

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メッセージ

高校生になると、周りの大人から進路を早く決めなさいと言われると思いますが、自分の専門を早い段階で決めきらなくていいと思います。まずはとっかかりをつくるために、難しく考えすぎず、興味があるテーマや、ここならやっていけそうかなという分野を探して、緩く楽しむ気持ちでいましょう。近年では、一つの分野でできることは徐々に限られてきており、いろいろな分野にまたがってやるほうが新しい学問や分野を開拓できます。もちろん、最初に一つの専門を学ぶのは大前提ですが、そこに固執せず、可能性を拓いていってください。

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金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。