100億年前を追え! ガンマ線バーストから宇宙の謎を解明
毎日起こっている宇宙最大級の爆発現象
1967年、アメリカの核実験監視衛星が地球からではないガンマ線を捉えました。その後、そのガンマ線は天体現象とわかり、宇宙最大級の爆発であることが判明しました。
「ガンマ線バースト」と呼ばれるこの現象は、太陽よりも重い恒星が終末期を迎えて崩壊するときや、中性子星(中性子でできた高密度の星)同士がぶつかるときに起き、その後にブラックホールになると考えられています。まず大量のX線・ガンマ線が、続いて可視光などの電磁波が放出されます。その放射はわずか100秒程度ですが、そのエネルギーは原子力発電所の発電量1037年分と非常に大きく、これは毎日のように観測されているのです。
100億年前の宇宙の姿を観測している
ガンマ線バーストは地球から100億光年離れた場所で起きています。つまり、私たちは100億年前の星の爆発を今見ているのです。宇宙は130億年前に誕生したので、宇宙初期の姿と言えます。
ガンマ線は地球の大気に吸収されるため、大気圏外にいる人工衛星で観測し、地上の望遠鏡は可視光の観測をします。また、ガンマ線バーストが起きるときに、時空のゆらぎである「重力波」も発生すると考えられており、近年この観測も盛んに行われています。このようにさまざまな波長の電磁波や重力波を同時に観測、分析することで、ガンマ線バーストの起源が研究されています。
ガンマ線検出技術の活用
そんな中、従来よりもエネルギーの低いガンマ線を検出できる装置が開発され、これを搭載した人工衛星が2023年度に打ち上げられる予定です。ガンマ線バーストに重力波が伴う場合は、低エネルギーのガンマ線が放出されている可能性が高いとわかってきたからです。そして、地上で重力波を観測しているチームと連携して、より詳しい研究が行われる予定です。
さらに、こうしたガンマ線検出技術は、レントゲンのような医療機器にも活用できる可能性があります。現在、医療分野と共同で、次世代の医療イメージング機器を開発する研究も進んでいます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
金沢大学 理工学域 数物科学類 助教 有元 誠 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
宇宙物理学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?