子どもたちの柔らかな感性を育む、図画工作の指導のために
図画工作に苦手意識を持つ教師は少なくない
日本では、一部の自治体を除き小学校の授業では、担任の先生が算数、国語のほか、図画工作も、音楽もすべて教えなければいけません。しかし「自分は上手に絵が描けないから図画工作の授業は難しい」と苦手意識を持つ先生が少なくありません。確かに、例えば3次元のものを2次元にして紙に描くというのは難しいのです。しかし、ちょっとした手がかりやアドバイスがあれば描くことができるのです。
顔の表現が絶対にうまくなる秘策
例えば、顔を表現するという課題を出したとします。人間は概念的に形をとらえるので、顔の輪郭から描こうとすると、なかなか上手に描けないものです。そこで、子どもたちに顔の各部分がどのくらいの間隔なのかを自分の手で確かめさせます。すると鼻と唇の間には指1本しか入らない、首の太さを測ると案外太い、上唇と下唇は同じ大きさではない、などが実感できます。次に「目から描いてみよう」「鼻の穴から描いてみよう」とスタート地点を示します。こうして細部から、拡散的に描いていくと、次第に顔の全体まで上手に描くことができます。
子どもの個性を評価する寛容さを持つ
次に、教師は子どもたちが描いた絵などを評価することになります。しかし、算数などとは違い答えは一つではありません。この絵はヘタだと決めつけるのではなく、それぞれの個性を評価する寛容さを持つことが大切です。そして、日常の暮らしの中から、面白い形、きれいな色を見つけ出すように、子どもたちの柔らかな感性を育むことをめざして指導していくことが求められます。それには、教師自身が柔軟性を持ち続けなければなりません。
実は美術教育では指導力がマイナスに働くことがあります。教師の指導によって子どもたちが無意識に萎縮し、のびのびと表現することができなくなることがあるのです。「実は先生は絵が下手なんだよ」と正直に話してもかまいません。それを聞いた子どもたちは、張り切って自分のイメージをのびのびと表現していくはずです。
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