アート教育を「身体性」から読み解く
「身体性」を重視するアート教育とは
小学校の図工や中学・高校の美術の授業は、形・色・イメージといった、造形要素を中心とした教育ですが、そこに、身体性を重視した表現とコミュニケーションを基盤に据える学びを「アート教育」としてとらえています。私たちの生活や世界はあらゆる造形要素で満たされています。それを頭だけで考えず、からだ全体や物事と対話し、実感として学んでいこうという考え方です。
例えば、おせち料理とはどういうものかを調べて、自分たちでつくって、重箱に詰めてみるというのも、アート教育の一環です。アートとは、衣食住といった生活や身近な社会に根差し、人が生きるとはどういうことかを問い直すものでもあるのです。
世界と対話する能力を育む
従来の学校教育は、できるかできないか、正解か不正解か、が重視される傾向にあります。その中で、我々も子どもも「~あらねばならない」という価値に縛られがちです。
それに対し、図工や美術という教科は、「問い」そのものをつくりだす時間です。「問い」や「気づき」というのは、自分の状況や取り巻く社会を客観視することです。そして、世界と対話することを学び、自分の中に納得する「答え」を見つけていきます。アート教育で身につくのは、上手に描く技量ではなく、気づき、世に問う=世界と対話するための能力です。
「生」を実感しづらい子どもたち
現代の子どもたちは、「生」を実感しづらくなってきています。スマートフォンやゲーム機を操作しているだけだと、「からだ(心身)」で理解できることが少なくなっていきます。それは、自己肯定感の低下や自他の存在=「生」の希薄化につながるので、まずは子どもの身体性を活性化させる必要があります。
アートは、そのための原動力です。身体性を活性化すれば、その人の個性が具体化されます。すると他者の個性を受け止めやすくなり、対話が広がるきっかけにもなります。身近なものを見る目、そして世界と対話する力を養うことで、よりよい社会をつくりだす素地ができていくのです。
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先生情報 / 大学情報
群馬大学 共同教育学部 美術教育講座 准教授 郡司 明子 先生
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