手足で触れる 遊びを通して世界を学ぶ
今こそ直接ものに触る機会を
デジタル機器が身の回りにあふれている今の生活では、デバイスを通じた視覚的な刺激が多くなりがちです。けれども幼児にとっては全身とつながった感覚が重要で、手や足などを使って周囲のものに直接触ることが、世界を知るための第一歩になります。デジタルの時代だからこそ、子どもがものに触れる機会を積極的に作る必要があるのです。そのために、保育士を養成する教育課程の実践として行うワークショップでは、粘土や絵の具など身近な素材を使った遊びが取り入れられています。
土粘土や絵の具でダイナミックに遊ぶ
保育の現場は、幼児を相手にすることから決してゆとりがあるわけではありません。それゆえに粘土遊びをする場合でも、手軽な油粘土や紙粘土、小麦粉粘土などを使いがちです。それに対して陶芸に使う土粘土は、乾きやすく、管理に手間がかかります。しかし自然素材である土粘土を使った遊びを通じて、水を加えれば粘土になり、乾いたものを砕けば再び土に戻るという土の循環も学べます。
絵の具を使う場合でも、絵を書くための道具という固定観念に縛られずに使用して、絵の具の触感そのものを楽しみながら全身を汚してダイナミックに遊びます。素材に直接触ることで子どもたちはものの特性を理解して、想像力を養えるのです。のびのびと遊ぶ行為は、子どもたちが抱えるストレスの解放にもつながります。
子どもの「発見する力」
子どもたちは誰に教えられなくても、遊びを通じて新しい気づきや学びを得ていきます。大人が想像している以上に、子どもには自分で探索して何かを発見する力が備わっているのです。
保育士をめざす学生たちは、自身が小・中・高を通じて常に何かと結果を求められており、ワークショップでも保護者の目を意識して子どもに造形の結果を求めがちです。しかし、造形で大事なのは最終的な成果物ではありません。造形する行為を通じて子どもが何を学び、どのように変わったのかという、過程そのものを見ていく必要があるのです。
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先生情報 / 大学情報
日本福祉大学 教育・心理学部 こども学科 教授 江村 和彦 先生
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