幼児教育から初等教育への「造形活動」の接続について考える
造形を通して自他を知る
多くの子どもが幼稚園・保育園や小学校で絵を描いたり、モノをつくったりといった「造形活動」を経験します。幼少期に、自宅やアトリエではなく、園や学校といった多くの人が集まる場で造形活動をするという経験は、表現の体験や方法を学ぶだけでなく、「自他を知る」ことにもつながります。例えば、自分の好きな色と友達の好きな色が違う、といった単純な事実から多様性の尊重につながる発見が得られるように、幅広い学びが期待されます。しかしそんな造形教育も、幼児教育から初等教育(小学校)への接続にあたっては、さまざまなギャップが生じることが指摘されています。
幼小接続のギャップ
例えば幼児教育では、緩やかな活動時間の中で子どもたちは自分の遊びたいことを見つけたり、活動に関わったりします。一方、小学校では決められた授業時間の中で活動をします。中学校でも同様です。造形表現、図画工作、美術の時間は、その子自身の思いやしたいこと、考えたことから出発していく活動です。その中にある、自ら気づき、考えて、表したりしていこうとすることは、人が育っていくためにはとても大切なことと言われていますが、一人ひとりの出発点や経験、実態等も異なるため、全員が同じ長さの時間の中で同じ進度で活動することには難しさも伴います。
教育学の役割
こうしたギャップも要因の一つとなり、幼児期には自分なりの表現活動に親しんできた子どもが、小学校の授業に戸惑い、表現が苦手になるケースも見られることがあります。また、教師たちも、子どもの実態に合った内容を考えたり、指導や支援の方法に苦慮するケースも少なくありません。
教育学では、こうした幼児教育や初等教育における造形活動のあり方についてさまざまな研究を行っています。その成果を教育現場にフィードバックすることで、子どもたちが主体的に取り組める表現の場を教育の中に設けること、また子どもたちの育ちにつながり、教師のサポートになるようなカリキュラムをつくることも、教育学の重要な役割なのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
千葉大学 教育学部 学校教員養成課程 准教授 小橋 暁子 先生
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