音楽の感動を共有するには? 統一的な記述方法を考える
音楽の感動をどう共有する?
心を動かされるような音楽を聞いたとき、その感動を他者に伝えるにはどうすればいいでしょうか。曲を聞いているときの心の動きを伝える方法があれば、音楽体験を多くの人と共有できるでしょう。さらに図で表すことができれば年齢や言語に関係なく、誰もが曲の内容などを理解しやすくなります。
感情曲線で見る作者と聴衆の違い
映画や音楽、小説などの内容の盛り上がりを表現するのに「感情曲線」と呼ばれる書き方があります。書き方には個人差が出ますが、作曲者と聴衆では大きな違いが出ることがわかってきました。
同じ曲を聞いた数百人の聴衆と、その作者に感情曲線を書いてもらい比較した研究があります。作者は制作時の意図を踏まえ、曲の区切りに合わせて感動のレベルが急激に変化するような曲線を書きました。一方で聴衆の曲線は曲の区切りとはさほど関係なく、ゆるやかに変動しています。曲調が変わっても聴衆の耳には直前のパートの余韻が残っており、感動レベルが変わるまでに時間がかかったと考えられます。
統一的な記述方法を探る
音楽の世界には楽譜という記述方法がありますが、楽譜は通常、個々の音符やフレーズに対する演奏方法が書いてあるだけです。それだけでも音楽の専門家以外には読解しにくいのに、さらに音楽の構造的な仕組みを伝え合うのはもっと大変です。そこで、簡易に音楽の仕組みを読み解けるような新たな記述方法の研究が始まりました。
感情曲線もその一つですが、ここでは、「緊張と弛緩(しかん)」という、いわゆる「気をつけー礼」の"おじぎ手法"を取り入れます。楽曲冒頭から進んで、サビがサビとして一番目立つためには、そこまでにどんな"伏線"がどのように張られているのかを、木構造という形で表していきます。
このような記述例を集めて、様々な観点から音楽の仕組みや聴取傾向などが比較できれば、「クリエイターになるにはこんな聞き方を身につけるといい」などと教えやすくなったり、作品制作自体に役立てられるのではと期待されています。
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福知山公立大学 情報学部 情報学科 准教授 橋田 光代 先生
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