法医学を学んだ「法医」の重要な役割と求められる能力とは
全国で200人しかいない「法医」
「法医」は、臨床医と違って亡くなった人を診る医師です。臨床医が病気の予防や治療を行うのに対して、法医は死因を究明します。臨床医の数は全国で約30万人ですが、法医は200人ほどしかいません。これは、法医が事件や事故で亡くなった人を対象としているためで、それだけなら少ない数というわけではありません。ところが、高齢化が進む中で、状況が変化してきています。
法医が診るべき人が急速に増えている
高齢化によって高齢者の死亡数が増えているにもかかわらず、病院や施設に収容できる数はそれほど増えていません。そのため在宅で亡くなる高齢者が増えています。なかでも独居老人は発見が遅れたり身元がわからなかったりして死因が不明なため、法医が診ることになります。
平成16年に比べると平成25年は、このような異状死体数が1.24倍に増えています。警察への通報も増えており、今後さらに状況が悪化すると予想されるので、200人という法医では対応しきれなくなってきています。ところが、法医が働く場というのは、大学の法医学教室や自治体が運営する監察医務院・事務所に限られるので、人数を増やすにも限界があります。
幅広い知識が必要な法医、高まる需要
そこで、臨床医にも亡くなった人を診る役割を担ってもらおうという動きがあり、そのための研修も行われています。そうは言っても、法医とまったく同じことはできません。死後時間が経つと状態が変わり、慣れていない臨床医は診ることができません。また、DV(ドメスティック・バイオレンス:親密な関係の人からの暴力)や虐待など死因に不審な点がある場合は、法医が担当することになります。
法医は、臨床医のように特定の診療領域だけを対象とするわけではありません。体のすべてを診て死因を明らかにすることになるので、広範囲な知識が必要になります。高齢化と社会の複雑化にともなって、法医は今後ますます必要とされ、また重要な役割を担うことになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 医学部 医学科 教授 久保 真一 先生
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