眠っている微生物の秘めたる力
微生物の研究の方向性はさまざま
微生物を研究する学問領域は、医学や薬学、農学、工学、理学など多岐にわたっていますが、それぞれ、微生物のとらえ方は異なります。例えば病原菌としての微生物であれば、「いかに殺すか」という研究が成り立ち、産業応用としての微生物なら、「いかに活躍させるか」という研究が発展してきました。環境に目を向けると、活動を抑えて眠っているかのような微生物が多数存在することから、「いかに眠らせるか」「いかに起こすか」という研究が盛んに行われるようになっています。
微生物から探る「生命」の姿
生物は、「生きている」とき、何らかの活動をします。微生物の場合、分裂して増えているかどうかが生死の見きわめの第一のヒントになります。とはいえ、環境中で常に分裂しているわけではありません。「生きている」状態は、どのように維持されるのでしょうか。これは「生命」の本質にかかわる課題です。
それを実際に調べるため、微生物が分裂しない状態を意図的に作り、細胞内の遺伝子やたんぱく質の状態を観察するという研究が行われています。その一つのきっかけとなったのが、光合成をする微生物です。光を与えることで体内にエネルギーを作らせ、分裂しないで生きている状態を作るのです。
眠っている微生物の大切な役割
微生物は環境中で常に分裂しているわけではありません。分裂していないが死んでもいない、「休眠」状態の期間がとても長いわけです。そうした休眠状態になると、熱などのストレスに対する抵抗性が上昇することがあります。実は、分裂していないときが微生物の本来の姿なのかもしれません。そこには、まだまだ私たちの知らない微生物の性質が隠れているようです。
そんな眠っている微生物も、何かの環境変化を感知し、再び分裂しはじめます。このようにして、環境中で驚くほど多様な微生物が共存し、それらが変化に対して覚醒・分裂することで、生態系が安定に維持されているのでしょう。
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