目に見える微生物がいる? 変形菌の不思議を探る
肉眼で観察できる微生物
微生物は目に見えないものだけではなく、肉眼で観察できるものもいます。例えば「変形菌」は、肉眼では見えない小さなアメーバの姿の時期と、「変形体」と呼ばれる目でも見える巨大アメーバの時期があります。その変形体は、さらにキノコのような「子実体」となり、野外でも肉眼で見つけられます。
変形菌は謎だらけ
変形菌は一般的に、自然界に大量に存在する細菌や菌類を適度に間引いてくれる捕食者として知られていますが、実はよくわかっていません。研究は長年行われていますが、扱いが難しいためなかなか進展していないのです。例えば、適した餌や環境がよくわかっておらず、研究室での培養が難しいという問題があります。また、肉眼では見えないミクロの姿と、目で見えるマクロの姿を行き来するため、変形菌の生き方すべてを観察するにはさまざまな工夫が必要です。謎だらけの変形菌ですが、この生物は動物型の細胞からできており、人間にも応用できる機能を持っていると考えられています。応用できる機能を見つけるためにも、まずは基礎研究をして実態の謎を解くことが必要です。
研究の課題を克服するには?
変形菌の研究は課題が山積みですが、それでも地道に研究が続けられ、色々な面白いことが明らかになってきています。この課題を解く鍵になるのが、「視点を変えて」物事を見るということです。例えば、微生物は20~30度の決まった温度で培養することが多いですが、自然界にエアコンはなく、寒い時も暑い時もあります。この視点で自然界の変形菌を観察し、好む温度や環境に似た条件を整えることで、培養の課題を克服できる可能性がでてきています。また、変形菌は捕食者と考えられていますが、自然界の食う食われるの関係は複雑です。普通は捨てられてしまう状態の変形菌を観察することで、変形菌が被食者にもなっていることが明らかになってきました。今までも研究はされてきたのに、謎だらけなのはなぜだろう?と、視点を変えて見ることで、隠された実態が明らかにできるかもしれません。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
室蘭工業大学 理工学部 システム理化学科 准教授 矢島 由佳 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
微生物学、分類学、生態学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?