食品と人体の相互作用? バイオメカニクスで「おいしさ」を探る

食感は食品だけでは決まらない
従来の食感研究は、食品自体に焦点を当てたものが中心でしたが、近年、「食感は食品と人体の力学的な相互作用」ととらえる視点からの研究が発展してきています。
食べ物の「サクサク感」や「カリカリ感」は食品の性質だけで決まるわけではなく、食品と人間の体の相互作用から生まれています。例えば、同じ煎餅でも高齢者と若者では感じる硬さが異なります。また、スナック菓子を食べるときの音は、頭の大きさによって変化します。これは大きな楽器ほど低い音が出るのと同じ原理です。このように食感は、食べる人の体の特徴によっても変わってくるのです。
かむ力で違う「バキッ」と「ガリガリ」
かむ力の違いによって食べ方が変わることも明らかになっています。かむ力が強い人は自分のペースで「ガリガリ」と食べることができますが、高齢者や子どものようにかむ力が弱い人は力をためて「バキッ」と一瞬で壊す食べ方になります。この違いを確認するため、人間の顎の動きを再現する特殊な実験装置が開発されました。この装置には板バネとおもりが組み込まれており、バネの剛性を変えることでかむ力の弱い人と強い人の食べ方の違いをシミュレーションできます。実験の結果、バネを強くした場合は「ガリガリ」と何度も小さく壊れる波形が観察され、バネを弱くした場合は力がたまって一度に「バキッ」と大きく壊れる波形が観察されました。この結果により、かむ力によって食べ方が異なり、食感も変わってくる可能性があると示唆されました。
バイオメカニクスから見る食感の世界
このような研究は、生体の構造と機能を力学的に解析する「バイオメカニクス(生体力学)」という学問分野に位置づけられます。将来は、さらに多彩な「おいしさ」の科学が解き明かされ、年齢や体の特性に合わせた食品開発や食育などを通じて、私たちの生活の質を高めてくれることでしょう。
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追手門学院大学理工学部 機械工学科 准教授門脇 廉 先生
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