メタン発酵は生ゴミをエネルギー資源に変える救世主

メタン発酵は生ゴミをエネルギー資源に変える救世主

微生物を利用した循環型社会づくり

メタン発酵は、有機物を微生物に分解させてメタンを主成分とするバイオガスを発生させる技術です。メタンはエネルギーとして活用でき、窒素やリンなどを含む発酵残液は肥料として農業に還元することも可能です。現在、家庭からの生ゴミは年間800万トン近く発生しており、メタン発酵はこれらの生ゴミを資源として循環させる魅力的な技術です。メタン発酵自体は既に100年以上の応用の歴史があると言われていますが、最近ではクリーンな廃棄物処理法として再注目されています。

地域に根差したエネルギー・資源循環をめざして

現在、家庭からの生ゴミの大部分が焼却処理されていますが、約8割が水分の生ゴミを燃やすというのは、水を蒸発させるために燃料を消費するという無駄な行為と言えます。その点メタン発酵は生ゴミと相性抜群で、微生物が最も活発になる35℃(または55℃)程度に温度を維持したタンクの中に生ゴミを入れるだけでOKです。食品残渣などを大量に集められる地域では大規模なメタン発酵施設の数は増えていますが、次の課題としては小型化と使いやすさです。サイズが小さくなるほど冷めやすくなるので、発生したバイオガスだけでは保温に必要な熱源が足りない場合があります。小型メタン発酵システムは現在、温泉排熱を利用できる温泉地での実証試験や、農業用ビニルハウスにヒントを得た太陽熱を直接活用する研究も行われています。

開発途上国の生活の質(QOL)も上げる

世界では未だ8億人が電気の通わない「無電化地域」で生活しています(2019年時点)。日本で暮らしている私達には想像しづらいかもしれませんが、わずかな電気さえあれば、灯りに変えれば日が暮れてからも勉強できたり、スマホを使って世界中の情報を得ることができます。メタン発酵では、発生したバイオガスで発電機を回して電気を生むことも可能なので、上述の小型メタン発酵システムを現地の生活文化や慣習に合わせ定着できれば、現地の人々のQOLは大きく向上することでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 フードコース 講師 阿部 憲一 先生

新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 フードコース 講師 阿部 憲一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

環境工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

インドの下水処理場で研究をしていたとき、中学生くらいの子ども達が汚泥まみれになりながらも、はつらつとした笑顔で働いている姿をよく見かけました。彼らは家族を養うためにこの仕事をしていると現地の研究者から聞いた時、「誰かのため」が「やりがい」に繋がるとあらためて気づきました。
貴方がまだ、懸命に取り組みたい何かに出逢っていないのであれば、私たちが生きていくうえで欠かせない食べ物にかかわる、食や農の学問をおすすめします。食料の生産、加工、供給は、必ず誰かのためになるので、やりがいを感じられるはずです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

新潟食料農業大学に関心を持ったあなたは

“Farm to Table to Farm”は「農場から食卓へ、そして農場へ」という意味です。食物は、農場で生産されてから多くの人の手を経て食卓に届けられ、この流れを「フードチェーン」とよび、農場から人々の食卓まで、フードチェーン全体をつかさどる産業を食料産業とよんでいます。本学では、新しい食料産業を作り出すために不可欠な科学(サイエンス)、技術(テクノロジー)、経済活動(ビジネス)を一体的に身につけます。日本の農業を変え、さらに世界をリードする新しい食料産業をともに生み出していきましょう。