知らないことだらけの微生物の不思議な世界をのぞいてみよう!

知らないことだらけの微生物の不思議な世界をのぞいてみよう!

わかっている微生物はわずかに1%

微生物は目に見えない小さな存在ですが、地球の環境を守り、物質の循環機能を促すなど、とても大きな役割を果たしています。その種類は非常に多く、例えば地面の土1グラム中には、およそ1万種の微生物が生存していると言われます。しかし、その中から個別に抽出して調べることができるのは、現在のところ、わずか1%程度です。ある意味、私たちは未知の微生物に囲まれて暮らしていると言ってもいいでしょう。 

微生物同士が作るミクロな世界

微生物の研究というと、従来は、1種類ずつ分けて取り出し、個々の性質を調べるというのが主流でした。しかし、実際に微生物が生存する環境では、1種類のみが単独かつ均質に存在するということはありません。さまざまな微生物が協同・競争しながら、ミクロな世界で「生態系(エコシステム)」を作っています。面白いことに、そうした生態系の中では、個々の微生物を単体で研究しているときには見られないような性質を確認することができます。
例えば光合成をするAという微生物は、1種類だけではうまく生きられないのに、もう1種類Bという微生物を入れてやると生育するようになる、といった例があります。単体では80度の温度で死んでしまう微生物が、別の種と共存している環境中では80度でも生き長らえているという例もあります。もちろんこうした友好関係だけでなく、ほかの微生物を食べたり排除したりするものもいれば、ひっそり息を潜めて生活し、生態系の変化を感知して起き出すものもいます。

関係性の中で発現する性質に注目した研究も

つまり、微生物が1種類ではなく複数で関わり合うときに、思いがけない性質を発揮するということです。ここ十数年で、ようやくそれがわかりはじめた段階ですが、今後はそうした関係性の中で微生物を研究することで、新たな機能を発見し、それを産業や環境保全に生かし、私たちの健康に役立てたりしていくことも可能になっていくでしょう。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 理学部 生命科学科 教授 春田 伸 先生

東京都立大学 理学部 生命科学科 教授 春田 伸 先生

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環境微生物学

メッセージ

99%以上の微生物は、まだ実態がわかっていません。それらを解明するというのは、非常に面白い挑戦です!
まずは研究方法を工夫することが重要ですが、生物や微生物のことしか知らないというのでは、新しい発想は生まれません。化学、物理をはじめ、ヒントになるものはさまざまな分野にあるので、興味の幅を広げておきましょう。そして、それらを関連づけて、未解明の生命・自然現象を想像できるようなイメージトレーニングを日頃から心がけておくといいと思います。

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。