タコの生態を解明して、海洋資源を守る?!
日本人が大好きなタコだけど
日本は世界一のタコ消費国であり、2000年頃までは、世界のタコ消費量の半分近くを日本が占めていました。しかし、現在では世界的にタコの需要が増えつつあり、供給量が足りなくなっています。日本でも漁獲量が減っているため、水産資源の保全とともに、養殖の可能性が模索されています。しかし、タコの生態に関してはまだまだわからないことが多く、人工繁殖も非常に難しいのが現状です。
タコの子どもは謎だらけ?
タコの繁殖が難しいのは、卵から成体へと成長するまでの生活史、特に子ども時代の生態について、ほとんど解明されていなかったからです。例えばマダコは、卵から生まれたときは2mmほどの大きさで、海中を浮遊するプランクトンとして暮らしているため、自然の中での暮らしぶりを知るのは難しいのです。
近年わかってきたことは、海中を浮遊する子どものタコは泳ぎがうまくないため、泳ぐために適度な水流が必要であること、また、成体のタコはカニや貝類などを食べるのに対して、子どものタコは特にカニの幼生を好んで食べることなどがあります。これらを応用して、ようやく日本でタコの子どもを飼育できる技術が開発されました。しかし、いつ頃から食べるエサが変わるのか、貝を食べる捕食能力や敵から隠れて身を守る能力をいつどうやって獲得するのか、流れ着いた場所からどう移動し、成長して戻ってくるのかという「分散・回帰戦略」などについては、まだはっきりわかっていません。
生態と生活史を知り、環境を守る
タコ・イカなどの頭足類をはじめ、身近な水産生物であっても、実はその子ども時代は解明されていない場合のほうが多いのです。タコの生態や生活史を知ることは、タコを飼育する上で重要な情報となり、それが養殖の手法に生かされつつあります。しかし、大事なのはそれだけではありません。自然の中で生きているタコがどう暮らしているのか、どういう環境で快適に生活できるのかなどが解明されることは、天然資源と環境の保全にもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋生物資源学科 准教授 團 重樹 先生
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生物学、水産学、増殖生態学、保全生態学先生が目指すSDGs
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