海の「スマホ」を作りたい! ~超音波利用による通信技術開発~

海の「スマホ」を作りたい! ~超音波利用による通信技術開発~

沖縄の美しく広大な海

日本は、北東から南西に連なった6,852の島からなる国です。沖縄の最西端の与那国島から最東端の北大東島までは約900キロあり、東京から福岡とほぼ同じ距離です。沖縄の海は実はそんなに広い海なのです。さらに、沖縄の海は亜熱帯から熱帯の海であり、サンゴ礁に覆われたとても透明度の高い海で、マリンスポーツなどの観光資源としても重要です。

沖縄近海の海底は資源の宝庫

日本は天然資源がない国なのでしょうか? それともある国なのでしょうか? 「日本には天然資源がなく、資源を輸入して加工して輸出する加工貿易の国」と習ったのではないでしょうか。
中国が自国の領土であるという主張をして、公船や軍艦が沖縄県石垣市の尖閣(せんかく)諸島の領海に侵入するという問題が起こっています。これは、1970年頃に、国連の調査団が尖閣諸島に大規模な石油資源があると発表してからのことです。そして最近になって、尖閣諸島の石油以外に、沖縄近海では「熱水鉱床」が数多く発見されています。これは簡単に言えば、海底火山の噴出口の近くに、銀、銅などの鉱物資源が大量に堆積し、海底に眠っているということです。

開発が期待される海中での通信技術

スマホで写真を送ったりビデオを見たりすることが簡単にできます。これは電波を用いて、大量のデータを伝送する技術が開発されたからです。残念ながら、海中では電波を飛ばすことは簡単ではありません。透明度の高い海であれば、光通信は可能ですが、一番確実なのは、音波を使う通信です。
スキューバダイビングの安全確保や、サンゴ礁を荒らすオニヒトデの海中ロボットによる駆除、深海の熱水鉱床の資源観測などを目的として、海中で撮った写真や動画を超音波を利用して伝送する通信技術の開発研究が進められています。電波の速度は秒速30万キロですが、超音波は秒速1500メートルと非常に低速で、移動しながらの通信はドップラー効果で大きく変動します。そんな厳しい条件を克服する技術開発が期待されているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

琉球大学 工学部 工学科 知能情報コース 教授 和田 知久 先生

琉球大学 工学部 工学科 知能情報コース 教授 和田 知久 先生

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情報工学、電子工学、通信工学

メッセージ

日本は、排他的経済水域(EEZ)の面積でみれば、なんと世界6位の海洋大国です。これからの日本を元気にしていく鍵は、「ずばり海洋開発」と言っても過言ではないでしょう。そのためには、海の中を無人で自動で動く船(AUV)、海の中で作業するロボット、それらをつなぐ通信技術が必要です。
そしてもっと必要なのは、若い皆さんが、やる気のあふれる「元気な日本人」になることです。私は、通信技術で貢献しようとがんばっています。あなたも、個性を生かして活躍できるプロフェッショナルをめざしてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

琉球大学に関心を持ったあなたは

本学は戦後間もない1950年5月22日、沖縄の首里城跡地に開学した国立大学です。建学の精神は「自由と平等・寛容と平和」であり、アメリカ大統領A.リンカーンの理念を反映するとともに、沖縄の歴史と文化に根ざしたものです。
法文学部、観光産業科学部、教育学部、理学部、医学部、工学部、農学部を設置し、また島嶼・海洋環境科学研究、健康長寿科学研究、琉球・沖縄文化研究などの地域特性を生かした研究を推進するとともに、深い学識と豊かな人間性をベースに、地域および国際社会で活躍できる人材を育成しています。