橋を造るのに必要な学問は、「建築」と「土木」のどちら?
橋が続々と「高齢化施設」になる
「道」は生活や経済活動を支える重要な社会基盤です。人体に例えると栄養と酸素を運ぶ血管にあたります。そして道が、河川や渓谷などで途切れないように建造されたのが「橋」です。日本には約70万基の橋がありますが、その多くは1960年代の高度経済成長期に造られたものなので、続々と築50年以上の高齢化施設となっています。加齢で傷んだ箇所を放置すると重症化(=通行止め)の危険性が増すため、橋を長寿命化させるには、橋の傷んでいる箇所を正確に診断する「橋の医者」が必要です。
橋も「定期健診」が重要
私たちが重大疾患を予防するために定期健診を受けるのと同様に、橋にも5年に1度の定期点検が義務づけられており、橋の裏側のコンクリートや鉄筋に、ひび割れや腐食などが発見された場合、適切な修繕を施さなければなりません。
ただ、橋の損傷は立地や形状、自動車通行量などによって異なる上、外見だけではわかりにくい劣化や、どんな修繕が必要か判断しにくいケースもあります。橋の場合、高度な診断ができる「専門医」の数が少なく、さらに財政面の問題も加わって、精密検査や治療が受けられない橋が少なくありません。「橋の専門医」を増やすため、土木工学分野を学んだ人材が求められています。
社会基盤を造るのは「土木」の役割
橋も建築物だから、「土木」ではなく「建築」の分野では?と、疑問に感じたかもしれません。では、和英辞典で、土木工学を調べてみてください。英語では「Civil engineering」で、つまり土木工学は「市民のための工学」なのです。
まちのグランドデザイン(全体構想=都市計画・地域計画)を策定し、道路、橋、トンネル、公園などの社会基盤を造り上げる仕事は、「建築」ではなく、「土木」の役割です。あなたが将来、まちづくりの分野で活躍したいと考えているなら、都市計画学・構造力学・水理学・土質力学・建設材料学など土木分野の知識がなければ、公共建造物を造り、さらにはその公共建造物を守ることはできないのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
琉球大学 工学部 工学科 社会基盤デザインコース 准教授 下里 哲弘 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
橋梁工学、土木工学、維持管理工学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?