海底地震計が解き明かす地球の秘密
地球と海洋との相互作用
地球の表面は、約70%が海で覆われています。地球は海に多大な影響を与え、海もまた地球に影響を与えています。こうした影響を正確に観測するために使われているのが「海底地震計」です。これを地球と海洋の接点である海底に設置し、地震によって発生する地震波をキャッチ・解析することで、医療機関で使われるCTスキャン(コンピュータによる断層撮影)のように、地球の中の構造を知ることができます。地球の構造や環境について観測・研究する地球科学という分野では、近年こうした「地球と海洋との相互作用」の研究に注目が集まっています。
海底で地震波を観測
海底地震計は、深海6000mの水圧に耐えるチタン製の耐圧容器に覆われています。容器にはセンサやレコーダー、バッテリーが内蔵されており、海面から音波を使って制御します。船から投入し着底した後、1~2年間にわたって地震波を計測・記録し、船で引き揚げてデータを解析します。震源から地震波が地球内部を伝播し、地表に到達するまでの時間を測り、基準となる時間に比べて早く到達する波と遅く到達する波を解析することで、地球の構造を明らかにします。これまで地球の約半分を占める太平洋を中心に、300カ所の海底で観測が行われてきました。
ノイズをシグナルに読み換える
陸上に設置される地震計とは異なり、海底地震計が地震波以外に記録してしまう海洋の動きは、これまで「ノイズ」とされてきました。しかし、例えば海面にたつ白波は、一つひとつは小さくても、波同士が相互に作用しており、やがて長い波長をもつ長大な波になります。海底地震計によって、この波が4000~5000mの海底にも届くことや、それが地球の回転に力を及ぼし、地球と月との重力によって起こる「海洋潮汐(潮の干満)」に影響を与えることもわかってきました。従来はノイズとされてきた海洋の動きを「シグナル」として読み解くこの研究によって、今後も地球や海洋の新たな事実が明らかになっていくでしょう。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
神戸大学 理学部 惑星学科 教授 杉岡 裕子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
惑星学、地球科学、地震学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?