クラゲから薬 魚のおいしさを長持ちさせるには? 水産資源の可能性
海洋生物資源学・水産資源利用学とは
海や湖沼には、多種多様な微生物や魚介類、藻類などが生息しています。これら、水圏における物質の循環や生物の動態、環境の保全を研究する学問が、海洋生物資源学です。そして、これらの研究を踏まえて、地域の海や湖と関わる水産業や水産加工業などへの応用を見据え、生化学、食品化学、加工技術、資源利用、水産物流通などを研究するのが、水産資源利用学です。
水産資源の利用におけるさまざまな課題
水産資源利用に関しては、課題が山積みです。例えば、海洋の魚自体は減ってきています。海の広さは無限ではなく、その海の中で生産される魚の量は決まっている上、魚は、海にいるほかの生物がエサにする以外に、人も利用するからです。以前は、漁獲量の最も多い国は日本でしたが、現在は中国です。利用する人が増え、魚が足りなくなっている状況があるため、水産資源の持続的な利用が求められています。
とはいえ、養殖が増えており、一見、漁獲量はそれほど変わっていません。ただ、今度は養殖のエサをどこから調達するかが問題となります。また、漁の際に魚に交じって捕獲されるクラゲやヒトデ、海藻などの未利用や、低利用の資源の処理なども課題です。
研究成果を地元の水産業へ還元
これら未利用、低利用の海洋生物資源を活用するための研究も行われています。例えば、クラゲから抽出されるレクチンという物質を薬に応用する研究や、陸上生物と魚のコラーゲンの特質の違いに注目した研究などがあります。
また、魚介類の死後変化に関する研究もあります。魚介類が死後どのように変化するかを調べ、おいしさ、新鮮さが長持ちする状態で市場に出荷する最善の方法が模索されています。新鮮さや味には神経活動にともなう筋肉の収縮が関係し、食感は血液と関係があります。神経を壊すタイミングと脱血の組み合わせで、品質さえコントロールできるのです。さらに、保存の温度も関係しています。そして、このような魚のおいしさを保つ方法の研究などは、地元の水産業に還元されているのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
福井県立大学 海洋生物資源学部 海洋生物資源学科 教授 横山 芳博 先生
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海洋生物資源学、水産資源利用学先生が目指すSDGs
先生への質問
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