憲法の解釈によって、国民の生き方・暮らし方まで変わる!
表現や言論の自由は、どこまで「自由」なのか?
表現や言論の自由は憲法によって保障されていますが、どんな意見をどのように表現しても許されるのでしょうか? 憲法は、国の営みの基本となる最高法規です。さまざまな価値観を持つ国民の人権を、平等に守らなければならないので、「ここまでならOK」といった具体的な内容には触れていない条文がたくさんあります。表現や言論の自由を認める憲法第21条は、その典型と言えます。大まかな方向性だけが示されている憲法の、解釈の仕方や問題解決の方法について研究するのが、「憲法学」という学問分野です。
憲法が明示していない部分を「法律」が補う
特定の国籍の人などに対し、攻撃的・侮辱的な言葉を投げかける「ヘイトスピーチ」が社会問題化しています。そこで国は2016年5月、不当な差別的言動の解消をめざす法律を制定しました。しかし、スピーチの禁止や罰則など、強制力のあるルールまでは作れませんでした。憲法第21条に抵触する可能性があるからです。憲法で具体的に示されていない事柄について、細かい個別ルールを設けるのが、「法律」や地方自治体の「条例」の役割ですが、それを定めるためにも憲法学の知見が必要になるのです。
憲法の解釈で、国民の生き方も変わる
自分自身の生き方や暮らし方を自由に決める「自己決定権」も、憲法第13条によって守られています。では、高齢化や医療技術が進んだことで話題に上る機会が増えてきた、「安楽死」「尊厳死」についてはどうでしょう。身体が思うように動かなくなり、慢性的な疾患に苦しんでいる人が、「これ以上苦しまずに最期を迎えたい」と思う気持ちは、悲しいけれど偽らざる本心であることも多いでしょう。
医師に対して安楽死を求めることも、自己決定権の行使と言えるでしょうか? 自ら死を選ぶという行為は、果たして憲法によって保障されるべきなのでしょうか? このように、憲法の解釈によって、私たちの生き方・暮らし方が変わってくることもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
北九州市立大学 法学部 法律学科 教授 中村 英樹 先生
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