世界最低レベルのジェンダー平等を、憲法の視点から考える
「男女格差」で世界最低レベルの日本
世界経済フォーラムの調査結果によれば、日本のジェンダー平等は2022年で146カ国中116位と、他国に大きく後れを取っています。特に政治分野では、女性の国会議員比率は10.7%、閣僚が11.1%と非常に低く、国民の半数を占める女性の声が政治に届きにくい状況です。これは、男性が外で働き女性は家にいるといった「性別役割分業」論や、1名しか当選しない小選挙区制では当選しやすい現職の男性の立候補を政党が優先することなど、さまざまな原因が考えられます。
男女格差の是正と憲法
こうした男女格差を解消する1つの方法が「ポジティブ(アファーマティブ)アクション」と呼ばれる特別措置です。これは、選挙において本来は憲法によって男女の別なく平等な機会が保障されていますが、あまりに格差が開いた場合に暫定的に講じる方法の1つです。具体例としては、女性候補者を男性よりも議員になりやすくする「性別クォータ制」があります。フランスでは1982年に国民主権原理や平等原則を根拠として憲法違反という判決が下されましたが、1999年には憲法を改正し、「性別クォータ制」の代わりに議員の立候補者を男女同数にするという「パリテ法」が導入されました。
憲法の観点から考える
フランスではほかにも男女を交互に記す候補者名簿の作成、男女候補者比率に開きがある場合の助成金の減額、男女ペアによる立候補といったさまざまな法改正が行われています。日本でも2018年に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律(候補者均等法)」が制定されましたが、罰則規定はなく、女性議員の比率は近年の選挙でさらに下がってしまいました。
国の最高法規である憲法の観点から男女の平等な政治参画について考えることは、憲法学の重要な役割です。その際には、海外の憲法や法律の比較研究や、あるいは社会学や政治学といった他分野の研究も大いに参考にしています。
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南山大学 法学部 法律学科 教授 菅原 真 先生
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憲法学、国際人権法学、ジェンダー論先生が目指すSDGs
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