講義No.13249 政治学 法学

島の現在から日本の未来を考える

島の現在から日本の未来を考える

島は全国の縮図でもある

「島国」日本には、西日本を中心に14,000を超える数の離島があります。生活の不便さなどから、本土の山間部に比べても早い段階から人口減や少子高齢化が加速してきた島が多く、現在では生活が維持できるかの瀬戸際にもなっています。有人島の中には、防衛上重要な国境の最前線が含まれます。また、かつて船での交易が盛んだった時代には、島だけで生活が成り立っていた事実もあるのです。島は、いわば日本の縮図なのです。

「政策のパッケージ」としての離島振興

1953年に5都県の知事が運動し、「離島振興法」という法律ができました。日本全体の人口はピークの2008年から減少に転じていますが、島ではそれよりも早い時期から人口減少が続いています。島には特有の歴史や文化、景観や人の絆といった良さがある一方、海に囲まれたアクセスの面では課題もあります。まだ振興のための分野横断的な研究は必ずしも十分には蓄積されておらず、ほかの政策領域との関連性がコンパクトに詰まった離島振興を、「政策のパッケージ」としてとらえることが重要になってきました。交通、産業、福祉、雇用、医療、教育、観光、エネルギーに至るまで、社会実験も可能なフィールドが離島にはあるのです。

離島振興を行う流れ

行政資源に基づく権力関係の理論を離島振興に当てはめてみましょう。中央政府である国が必要な法律を作って資金を出し、地方政府としての自治体は、組織力があり、地域に身近であるため、実情に応じた政策を作り、役割分担をして実施するという構図が日本の離島振興の特徴です。法律上、どんな離島振興をするのかを計画するのは都道府県の役割ですが、その案を作るのは地域に最も近い市町村が担います。公務員だけでなく、地域の企業やNPO、自治会なども参加して、それぞれがよく知る島の実情を踏まえて「協働」しながら取り組むのです。国と自治体の関係や地域の政策を考えるうえで、島から学べることは多く、日本の未来を考えるヒントは離島にあるとも言えるでしょう。

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北九州市立大学 法学部 政策科学科 准教授 黒石 啓太 先生

北九州市立大学 法学部 政策科学科 准教授 黒石 啓太 先生

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行政学、地方自治論

先生が目指すSDGs

メッセージ

コロナ禍でさまざまな問題が出現したと言われますが、これは既存の課題が顕在化した側面もあるでしょう。課題はあったのに認識されていなかったのです。認識されなければ、調査や研究も行われません。高校生のあなたには、身近に存在する課題を認識するための感覚や嗅覚を「視点」として身につけてほしいです。アンテナを張って課題を拾いあげながら、ぜひ一緒に地域や社会のこれからを展望しましょう。大学ではそれが可能で、例えば島に関する政策でも、先人たちの積み重ねた知見が活用できます。

先生への質問

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北九州市立大学に関心を持ったあなたは

北九州市立大学は、文系4学部・1学群(北方キャンパス:外国語・経済・文・法学部、地域創生学群)、理系1学部(ひびきのキャンパス:国際環境工学部)を擁する公立の総合大学です。
産業技術の蓄積、アジアとの交流の歴史、環境問題への取組といった北九州地域の特性をいかし、「地域に根ざし、時代をリードする人材の育成と知の創造」を目指し、「選ばれる大学への質的成長」「大学のプレゼンス(存在感)」「環境・地域・アジア」をキーワードに、語学教育、環境人材育成、地域人材育成に力を入れています。