島の現在から日本の未来を考える
島は全国の縮図でもある
「島国」日本には、西日本を中心に14,000を超える数の離島があります。生活の不便さなどから、本土の山間部に比べても早い段階から人口減や少子高齢化が加速してきた島が多く、現在では生活が維持できるかの瀬戸際にもなっています。有人島の中には、防衛上重要な国境の最前線が含まれます。また、かつて船での交易が盛んだった時代には、島だけで生活が成り立っていた事実もあるのです。島は、いわば日本の縮図なのです。
「政策のパッケージ」としての離島振興
1953年に5都県の知事が運動し、「離島振興法」という法律ができました。日本全体の人口はピークの2008年から減少に転じていますが、島ではそれよりも早い時期から人口減少が続いています。島には特有の歴史や文化、景観や人の絆といった良さがある一方、海に囲まれたアクセスの面では課題もあります。まだ振興のための分野横断的な研究は必ずしも十分には蓄積されておらず、ほかの政策領域との関連性がコンパクトに詰まった離島振興を、「政策のパッケージ」としてとらえることが重要になってきました。交通、産業、福祉、雇用、医療、教育、観光、エネルギーに至るまで、社会実験も可能なフィールドが離島にはあるのです。
離島振興を行う流れ
行政資源に基づく権力関係の理論を離島振興に当てはめてみましょう。中央政府である国が必要な法律を作って資金を出し、地方政府としての自治体は、組織力があり、地域に身近であるため、実情に応じた政策を作り、役割分担をして実施するという構図が日本の離島振興の特徴です。法律上、どんな離島振興をするのかを計画するのは都道府県の役割ですが、その案を作るのは地域に最も近い市町村が担います。公務員だけでなく、地域の企業やNPO、自治会なども参加して、それぞれがよく知る島の実情を踏まえて「協働」しながら取り組むのです。国と自治体の関係や地域の政策を考えるうえで、島から学べることは多く、日本の未来を考えるヒントは離島にあるとも言えるでしょう。
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北九州市立大学 法学部 政策科学科 准教授 黒石 啓太 先生
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