つらくて当然? 犯罪者の処遇を考える

犯罪者の処遇
罪を犯した人の処遇は、刑法や関連する法律によって規定されています。刑法では、実刑判決を受けた人を拘束することを「禁錮」といい、刑の執行中に労働が課される刑罰のことを「懲役」といいます。懲役刑を受けた人はさまざまな労働に従事しますが、その対価は時給にして7円から50円程度です。また、刑務所内の多くの場所には冷暖房がなく、熱中症や寒さで命を落とす人もいます。さらに近年では高齢の受刑者が増え、その介護の負担はほかの受刑者や刑務官が負っています。2025年6月からは懲役と禁錮を単一化した「拘禁刑」が施行され、さまざまな改革が進められています。
日本と海外の刑務所
日本の刑務所では、作業中のふるまいはもちろん、食事やトイレ、入浴など生活全般において細かな規則が設けられています。そうした厳格な規律は、施設の保安だけでなく受刑者の社会復帰にも有益であると考えられています。また、家族との面会にも制限があり、それが家族とのつながりを薄れさせる要因であるとの指摘もあります。
一方、フランスの刑務所などでは規則はより緩やかです。面会に来た家族と一晩ともに過ごせる部屋が設置されているケースもあります。フランスでは「刑務所にいること自体が刑罰である」という考え方が主流で、刑務所の中を社会に近づけることが、受刑者の社会復帰を助けると考えられているのです。
人権と社会の平和を守る
犯罪者への過酷な処遇や厳しい規律を「罪を犯したのだから当然」とする考えは、いつの時代も存在します。日本でも犯罪者の扱いが甘いのではないかといった声はしばしば聞かれます。しかし、罪を犯した人でも人権は保障されなければなりません。熱中症に苦しんだり、適切な医療を受けられずに困っていたりする人々を、罪を犯したことを理由に切り捨てて良いことにはなりません。犯罪者の処遇の実態を知り、適切なあり方を考えることは、より良い再犯防止や社会復帰の方法を考えることにつながり、結果的に社会全体の安全を守ることにもつながるのです。
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龍谷大学法学部 法律学科 准教授相澤 育郎 先生
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