新しい捜査手法GPS捜査の運用ルールは?
最高裁が下したGPS捜査判断
警察など捜査機関が捜査対象者の車にGPS端末をひそかに付け対象者の動向をつかむ、GPS捜査というものがあります。新たな技術を使った捜査手法ですが、これまで法的に明確なルールがありませんでした。GPS捜査に対して各地の裁判所でさまざまな見方が示されていたのですが、最近、最高裁判所は「GPS捜査は、令状がなければ違法」という初めての判断を示し、大変注目されました。
憲法解釈にまでさかのぼる
それまで刑事訴訟法のルールの中で議論されてきたこの件に対し、今回、最高裁は「住居等の不可侵」を規定した憲法35条の解釈にまでさかのぼった説明をしました。これは、令状がないと警察や検察、行政機関も勝手に個人の住居等の中に入ってきてはいけないというものですが、この考え方の源流は欧米の近代国家の法制度にあり、その歴史的な変遷をたどれば「プライバシー」の考え方がどうやって生み出されてきたかも読み取ることができます。
このように日本の明治以降の法制度は、欧米の近代的な法制度を輸入して整備されてきた経緯があります。また、欧米の制度も大きく英米法・大陸法(フランス・ドイツなど)の二つに分かれており、さらに各国の歴史や文化的背景による理解の違いも影響していて、実に多様です。
ルールの新しい意味や説明を「発見」する
GPS捜査のように、新しい技術や社会の変化によって登場した事象を既存のルールの中でどう判断するかというとき、研究者は既存の制度が成立した歴史的・文化的背景を重視しながら諸外国の制度との比較、法律の文言やとらえ方などさまざまな視点から議論を重ねます。そうしていくと、そのルールの新しい意味や説明が発見される、つくり出されることがよくあり、そのアイデアを、実務に携わる人たちに提供していくのです。
法学は「既存の制度の説明にとどまっている」というイメージを持たれがちですが、実は「発見」を繰り返す、生きている学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 法学部 法学科 教授 松田 岳士 先生
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