スマホで観るストリーミング動画が、高精細映像に進化するかも!

スマホで観るストリーミング動画が、高精細映像に進化するかも!

分け合っているので「理論値」の通信ができない

アーティストの動画をスマホやタブレットで観賞中、映像がストップしたり、全画面表示にすると画像が粗くなったりして、イライラした経験はありませんか。私たちが使っているスマホの無線LANは、最大で約300Mbps、つまり1秒あたり300メガビットのデータ伝送が可能な設計ですが、実際には40~50 Mbps程度しか伝送されていません。一定容量の電波を常に複数ユーザーが「シェア」している状態なので、「理論値」通りのデータ量をやり取りするのは不可能なのです。

もっと圧縮できればテレビの楽しみ方も変わる

ハイビジョン映像のデータ量は、約1.5G(1500M)bpsにも達します。映像や音声を大幅に圧縮し、電波を効率的に使用する技術を用いることで、膨大な量のデータを送っているのです。このように、「映像や音声を圧縮する技術」「それを高速に大容量伝送する技術」「圧縮した映像・音声を歪みなく復元する技術」がもっと進歩すれば、Wi-Fi接続でハイビジョン映像が楽しめるようになるでしょう。現在、72 Gbpsというスーパーハイビジョンの放送開始に向け、従来の2倍以上の圧縮率を実現する圧縮技術や、通信容量を大きくする技術の研究が進められています。スマホのストリーミング動画も高精細映像に進化するかもしれません。

無線だからこそ著作権保護技術も重要に

ハイビジョン映像が無線LANで楽しめるようになると、本来は利用料金を支払ったユーザーしか見られない映画などが、電波が届く範囲にいるすべての人たちに「タダ見」されてしまうかもしれません。ですから著作権保護のために、伝送時には映像の解像度を低くするなどの対策が必要です。ただし、正規ユーザーはきちんとした高精細映像が見られるよう、完全に復元できる技術も必要です。
一般家庭の無線LANで、ハイビジョン映像を楽しめるようにするには、データ圧縮と大容量伝送、さらに著作権保護の技術も進歩させる必要があるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

九州工業大学 情報工学部 情報・通信工学科 教授 黒崎 正行 先生

九州工業大学 情報工学部 情報・通信工学科 教授 黒崎 正行 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

情報通信工学、画像工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

テレビを観るのは好きですか。何気なく眺めている地上デジタル放送には、データの圧縮や大容量伝送など、最新の技術がふんだんに導入されています。もし、無線によるデータ伝送などの技術ジャンルに興味を持っているのなら、いまのうちに、数学と物理の基礎をしっかり学んでおきましょう。
加えてもう一つ、一生懸命勉強することも重要ですが、興味の原点となった「テレビを観るのが好き」という気持ちは大事に持っていてください。好きなことだからこそ頑張れる場面が、大学では数多くあるからです。

先生への質問

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九州工業大学に関心を持ったあなたは

「情報工学」は、高度情報化社会の進展の中で、ますます必須知識・技術となっています。
九州工業大学情報工学部は1986年に創設された日本初、現在も国立大学で唯一の情報工学部です。知能情報工学科、情報・通信工学科、知的システム工学科、物理情報工学科、生命化学情報工学科の5学科があり、それぞれの分野において、高度な専門技術を身につけた人材を養成します。これまでに1万人を超える情報通信技術者を生みだし、様々な分野で日本の情報通信革命を支えています。