生命誕生の謎から分子結合まで! タンパク質を化学の目で見てみよう
タンパク質を「化学」の視点で研究する
生き物の体をつくるタンパク質は、アミノ酸の鎖です。アミノ酸が複数個つながったものは「ペプチド」と呼ばれ、アミノ酸の数が数十個と長い鎖になり、折れ曲がって立体構造をとると、生体内で特定の役割を果たす「タンパク質」と呼ばれます。
生物学の視点で研究されることが多いタンパク質ですが、分子構造など化学の視点で分析することで、さまざまなことがわかってきました。
タンパク質中の硫黄原子の特異な結合
ほとんどのタンパク質には硫黄が含まれています。近年の研究により、タンパク質中の硫黄原子は特殊な結合の仕方をしていることがわかりました。
一般的には、化合物中で原子同士が結合しているときには、原子の一番外側の殻に8個の電子が存在するという法則「オクテット則」が知られています。しかし、タンパク質中の硫黄原子はときどき最外殻に10個の電子をもつことがあり、それがタンパク質固有の機能を生み出しているのではないかという仮説が生まれました。
また、ペプチドが水素結合することによって、タンパク質の鎖がαヘリックス(らせん)やβシート(ジグザグ)の形になりますが、その中のアミノ酸分子の状態はよくわかっていませんでした。水素結合でらせんやジグザグになることで、アミノ酸分子がゆがむのではないかという見方もありました。しかし研究の結果、単体で存在するときのアミノ酸の形状と、タンパク質の中で水素結合したアミノ酸の形状は同じだとわかりました。
生命誕生のときの環境がわかる!?
さらに、そのアミノ酸をエネルギーに着目して分析(ボルツマン解析)した結果、200℃で変化が起こらない平衡状態になることがわかりました。このことから、生命の元であるアミノ酸の誕生は、海底火山の周りの200~300℃という水中で起こったのではないかという仮説が立てられています。
こうしたタンパク質の化学的な分析は、ホルモンなど医療に有用なタンパク質合成にも生かされると期待されています。
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