巨大構造物を作るのに欠かせない振動制御技術とは?

巨大構造物を作るのに欠かせない振動制御技術とは?

振動の制御が宇宙太陽光発電のカギ

宇宙では自重を支える必要がないため、薄くて巨大な構造物を作ることができます。宇宙で発電した電力をマイクロ波で地球へ伝送する「宇宙太陽光発電」で考えられているのは、一辺が数キロメートルにも及ぶ巨大な構造物です。発電するには常にパネルを太陽へ向くように動かすことになりますが、その動きには振動が付きものです。薄くて巨大な構造物は振動も無視できない大きさとなるため、それをいかに小さく抑えるかが課題です。

振動制御の2つの方法

振動を抑えるには2種類の考え方があります。1つは絶えず土台を動かし続けることです。箒(ほうき)を逆さまにして手の平の上でバランスを取る、あの遊びの要領です。もう1つは振動に振動をぶつける方法で、「アクティブ制御」と呼ばれています。具体的にはセンサで振動を感知し、信号処理を行い、位相が逆向きとなる振動を当てて止めます。東京スカイツリーや横浜ランドマークタワーなど、多くの構造物はこの方法で制御されています。高層ビルは風の影響を受けやすく、もし振動制御装置がなければ、上層階にいる人はビル酔いしてしまうことでしょう。

ノイズキャンセリングは難しくない

音も振動ですから、同様の方法で消すことができます。音に音を当てて消す、この原理で作られているのがヘッドホンなどに搭載されているノイズキャンセリングです。また音は発信源から離れると徐々に小さくなりますが、減衰をうまくコントロールすれば近距離のみに音が聞こえるニアフィールドスピーカーが作れます。さらに応用例として、踏切の警報音を通行人のみに聞かせる仕組みも考えられています。
ただし音はさまざまな要因が複雑に絡み合っているため、コントロールが難しいところがあります。ノイズキャンセリングヘッドホンが成功しているのは、耳の入り口から鼓膜までの間で音を消せばよく、音響現象としてシンプルだからです。もしこれと同じことをトンネルでやろうとしたら、なかなか難しいのです。

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成蹊大学 理工学部 理工学科 教授 岩本 宏之 先生

成蹊大学 理工学部 理工学科 教授 岩本 宏之 先生

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振動工学、音響工学、制御工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

もし何か機械を作ろうとすると、ほとんどの場合、振動と音が問題になります。いずれも難しいテーマですが、達成感のある分野と言えます。なぜなら、理論を組み立てて装置を作った時、うまくいくかいかないかの結果がわかりやすいからです。
理論を組み立てるにも、基礎が大事です。特に大学1、2年生のときにしっかり勉強してください。基礎固めは簡単なようで難しく、わかったつもりで実はわかっていないということがよくあります。テストでよい点を取るために暗記するのと、その知識を身につけて使いこなすのは別の話だと考えましょう。

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