微量分析へ挑む「簡易分析法」の開発
生活に欠かせない簡易分析
私たちは種々の物質の中で生きています。その物質の化学成分の種類、量、状態を計測・解析するための学問が分析化学です。その中の一つとして「簡易分析」という分野があります。分析化学は、ハイテク装置を用いた精密な分析法とともに簡単便利な簡易分析法の開発の両輪で研究が進んでいます。簡易分析は、環境、医療、食品、教育など、社会の多くの分野の日常的な分析に利用されていて、私たちの生活を支えています。限られた資源で無駄のない効率的な社会を実現するためにも簡易分析法の発展は今後ますます重要な研究テーマです。
強みは「簡単」「速い・早い」「誰でも使える」
日常的な分析では、いつも大がかりな分析操作を行うよりも必要な精度で簡単に素早く測定することが求められる場面が多くあります。そこで活躍するのが簡易分析です。
例えば、水質分析において簡易分析法で多検体を細目に測定した方が水質の状態をよくモニターしていることになります。また簡易分析の活躍の場は専門家に限りません。例えば、学校現場で子どもたちが自ら測定を行い身近な河川水の姿を知るなど学習の世界を広げることができます。
簡易分析のニューヒーロー「デジタルカメラ」
分析法の中には種々の化学反応を利用した「色」の変化を測定する方法が多くあります。その精密な測定には分光光度計、蛍光光度計、炎光光度計などの分析機器が用いられます。一方、簡易分析法では目視法(人間の眼で判断)が主ですが、分析感度や精度の向上が課題です。
そんなニーズの中で、注目されるのがデジタルカメラの分析機器としての活用です。色の原因は、光の「吸収」と「発光」に分けられ、高額な分析機器は吸収と発光のどちらかの方式に特化しています。しかし、デジタルカメラは工夫次第で吸収・発光の両方の色を素早く測定でき、分析の感度・精度も高額な分析機器に匹敵する方法が研究されています。低価格の普及品であるデジタルカメラを分析機器として活用した分析法の開発がますます期待されています。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 教育学部 理科教育科 教授 菊地 洋一 先生
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