講義No.13583 資源・エネルギー工学 理工系その他

極小の粒まで回収せよ! 限りある資源を最大限活用する技術開発

極小の粒まで回収せよ! 限りある資源を最大限活用する技術開発

循環型社会に必須の資源回収技術

カーボンニュートラルの実現に必要とされる電気自動車(EV)の製造には、銅やレアアースが必要です。また再生可能エネルギーである風力発電の発電装置には鉄と銅、アルミニウムが欠かせません。ところがこれらの資源は枯渇しつつあります。そのため、「難処理鉱石」と呼ばれる金属を取り出すのが難しい天然鉱石の分離精製技術や、スマホ・パソコンなどの廃棄物である「都市鉱山」からのプラスチックを含めた資源回収技術の開発が必要です。

これまで選別できなかった微粒子の回収

鉱石から有用な金属を物理的に選別する「選鉱」の技術は、人工物のリサイクルにも応用できます。従来の技術では選別できる粒子の大きさが50~100ミクロン程度でしたが、より無駄なく選鉱・リサイクルするために5~10ミクロンの粒子を選別する技術の研究が行われています。
分離選別の技術には、比重や磁気、電気伝導性の違いを利用したものがあります。プラスチックの比重差を利用した「ジグ」と呼ばれる選別機は、水槽の中に上昇流を起こしてプラスチック粒子を浮き上がらせたあと、沈降速度の違いで選別します。ジグはもともと石炭と石を分ける装置ですが、より比重差の小さいプラスチックを分けられるように改良されました。また試料によって上昇流の速度などの条件を変える必要があるため、コンピュータで自動制御できるよう改良が進められています。

持続的に無駄なく回収できる技術を

物理選別と化学処理を組み合わせた前処理技術も研究されています。例えば銅の微粒子の表面を改質して疎水化すると、油を介して微粒子が集合して大きくなるため、従来の技術で選別できるようになります。
現段階で、コストを度外視すれば微粒子まで分離する技術はありますが、それでは持続的な選別・リサイクルはできません。天然鉱山および都市鉱山からの無駄のない資源回収が事業として成立するような、経済的合理性のある技術開発をめざし、研究が進められています。

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北海道大学 工学研究院  教授 伊藤 真由美 先生

北海道大学 工学研究院 教授 伊藤 真由美 先生

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資源再生工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

資源回収の研究には物理や化学の区別はなく、使える方法を柔軟に組み合わせて考えることが必要です。興味があるなら、いろいろな分野を幅広く勉強しておいてほしいです。また、学校で習わないことも、自分で教科書を読んだり調べたりしておくと必ず役に立ちます。私も高校では生物を選択しませんでしたが、自分で勉強して、大学の卒業論文ではバクテリアを使った精錬法をテーマにしました。今は便利なインターネット検索などもあるのでどんどん活用し、能動的に知識を吸収して新しいアイデアを出してみてください。

先生への質問

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北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。