光で音を見る? 新しい音のセンシングを切り拓く
音の情報を広い範囲で集めるには?
音は遠くに伝わるにつれて小さくなるので、マイクロホン1つで遠くの音をとらえるのは難しいです。広い範囲で音の情報をとらえ、処理するためには、マイクロホンを分散的にばらまくことができればよいのですが、これは簡単ではありません。通常のマイクロホンはオーディオケーブルでつながなければならず、配線が煩雑になりますし、ワイヤレスマイクロホンは、無線帯域の制約から使える数に限りがあったり、混線したりしてしまいます。
音の強さを光の明るさに変換する
近年、「光で音を見る」新しい音情報処理への取り組みが始まっています。この研究では、マイコンボードにマイクロホンとLEDを取り付け、音の強さを光の明るさに変換する「ブリンキー」という小型のセンサノードが開発されています。つまりブリンキーのLEDは、音が大きいと明るく、音が小さいと暗く光ります。また、ブリンキーはバッテリーも内蔵しており、ケーブルも無線接続も使わず、広範囲にばらまくことができます。ばらまかれたたくさんのブリンキーをビデオカメラで撮影すれば、広範囲での音の大きさの情報を一括して得ることができます。ビデオカメラの画素数は100万ピクセル以上が普通ですから、ブリンキーが100個あっても1000個あっても問題ありません。
ビデオカメラを使った音のセンシング応用
ブリンキーを利用し、広範囲の音情報をビデオカメラで得ることができるようになると、いままでとは全く違う音のセンシング応用が切り拓ける可能性があります。例えば、災害時にブリンキーをヘリコプターでばらまいてドローンカメラで見て回ることにより、助けを求めている人の声を見つけることができるかもしれませんし、工場内にブリンキーを配置すれば、監視カメラで機械の異常音を検出し、位置を特定することもできるでしょう。音の大きさの情報だけを用い、音声自体を記録しているわけではないので、プライバシーが保護され、高齢者の見守りなど、家の中で用いる応用にも安心して使うことができます。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 情報科学科 教授 小野 順貴 先生
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